#お役立ちコラム
IGESファイルとは|開き方・STEPとの違いと読み込み後の確認

IGESファイルは、異なるCADソフトの間で形状を受け渡すために作られた交換形式のファイルです。
この記事では、IGESの中身がどう並んでいるか、何が渡って何が渡らないか、開き方と変換の手段、STEPとの使い分け、読み込んだあとに詰まったときの確認順序を扱います。
執筆: bestat 編集部
IGESファイルとは
IGES(Initial Graphics Exchange Specification)は、CADシステムの間で製品の形状データを受け渡すための交換形式です。ファイルの中身はバイナリではなくテキストで、IANAのメディアタイプ登録も、IGESを平文のASCIIで符号化した形式として記述しています(IANA model/iges)。
仕様書として確認できるいちばん新しい版はIGES 5.3です。規格番号は ANS US PRO/IPO-100-1996、発行主体は U.S. Product Data Association、発行日は1996年9月23日です。同書のバージョンフラグ表は値11(=5.3)で終わり、11を超える値を見つけた読み込み側は11として扱うと定めています。この資料からは、5.3のあとに新しい版が加わっていないと考えられます。
実務でIGESを受け取るのは、次のような場面です。
協力会社や部品メーカーから、部品の形状データが .igs で届く
過去の設計資産が、当時の受け渡し形式のまま .iges で保管されている
解析ソフトや加工用のソフトへ、面の形状だけを渡す
.igsと.igesの違い
.igs と .iges は、同じIGES形式を指す2つの拡張子です。保持できる情報や精度に差はありません。IGES 5.3の仕様が定めているのはファイル内部の並びであり、拡張子そのものは規定していません。どちらの表記で届くかは、書き出したCADの設定によります。
受け手が拡張子を指定する場合は、その表記で書き出します。逆に、拡張子だけを .igs から .iges へ書き換えても、中のデータは変わりません。開けなかったファイルが開くようになったり、面の集合が立体に変わったりすることはありません。
IGESファイルの中身と5つのセクション
IGESファイルは、Start・Global・Directory Entry・Parameter Data・Terminate の5つのセクションがこの順で並んだ構造です。固定形式では1行が80桁と決まっていて、73列目にセクションを示す記号、74〜80列目に順序番号が入ります。
IGES 5.3(ANS US PRO/IPO-100-1996、U.S. Product Data Association、1996年9月23日発行)の§2.2は、この並びを次のように記述しています(仕様書PDF)。
the file consists of 80-column lines. Lines are grouped into sections. Each line contains section-specific data field(s) in columns 1-72, an identifying letter code in column 73, and an ascending sequence number in columns 74-80.
セクション | 73列目の記号 | 入っている情報 |
|---|---|---|
Start | S | 人が読むための前書き。1〜72列に任意の文字を書ける |
Global | G | 送信元のシステム名、単位、精度、準拠する版など、ファイル全体の情報 |
Directory Entry | D | エンティティごとの属性。1件につき2行を使う |
Parameter Data | P | エンティティごとの数値。1〜64列がデータ、66〜72列が対応するDirectory Entryの先頭行番号 |
Terminate | T | 各セクションの最終順序番号。1行だけ |
エンティティは、点、曲線、面、注記など、IGESがデータを数える単位です。属性はDirectory Entryに、実際の数値はParameter Dataに分かれて入り、両者は行番号で結び付いています。
Globalセクションで先に見る項目
Globalセクションには、受け取り側が読み込みを進めるための前提が並びます。中でも送信元のシステム名と単位は、読み込み結果がおかしいときに最初に確認する箇所です。
番号 | パラメータ名 | 読み取れること |
|---|---|---|
5 | Native System ID | 交換ファイルを作成した元のCADシステムの識別名 |
6 | Preprocessor version | 書き出しを行った処理系のバージョン |
13 | Model space scale | モデル空間の尺度 |
14 | Units flag | 単位。1=インチ、2=ミリメートル、6=メートルなど |
15 | Units Name | 単位の名前。14の値が3のときはここで指定する |
23 | Version flag | 準拠する版。11が5.3 |
単位フラグ(14)は既定値のある欄で、その既定値は1、つまりインチです。ミリメートルで設計したモデルでも、この欄が既定のまま書き出されたファイルを読み込む側は、インチとして扱います。読み込んだ寸法が実物の25.4倍または1/25.4になっているときは、まずここを疑います。
IGESで渡るもの、渡らないもの
IGESが確実に運ぶのは、点・曲線・面です。閉じた立体(ソリッド)を表す仕組みも規格の中にありますが、仕様書はそれを「未検証」の分類に置いています。設計履歴と寸法拘束は渡りません。
分類 | 主な内容 | 受け取り側での扱い |
|---|---|---|
渡りやすい | 点、直線、円弧、NURBS曲線(Type 126)、NURBS曲面(Type 128)、トリム面(Type 144) | 曲線や面の集合として読める |
実装しだい | ソリッド(Type 186と、面や辺のつながりを表すVertex・Edge・Loop・Face・Shell)、平面・円柱面・円錐面・球面・トーラス面などの解析曲面 | 仕様書が未検証としている範囲。送信側が書き出せるか、受信側が読めるかを個別に確かめる |
渡らない | 設計履歴(スケッチや押し出しの順序)、寸法拘束、パラメータ | 受け取った側で作り直す |
ソリッドにならないのは規格の側にも理由がある
IGES 5.3の§4.1には、Table 5「Untested Entities」という表があります。立体を構成する Manifold Solid B-Rep Object(Type 186)に加え、Vertex(502)、Edge(504)、Loop(508)、Face(510)、Shell(514)がこの表に並びます。平面(190)、円柱面(192)、円錐面(194)、球面(196)、トーラス面(198)といった解析曲面も同じ表に含まれます。同書§1.9は、未検証のエンティティについて次のように注意しています(仕様書PDF)。
Implementors are cautioned that the entities may not work and may be significantly changed based on implementation experience.
つまり、面がばらばらの状態で届くのは、送信側の設定だけが原因とは限りません。立体の表現そのものが、1996年発行の5.3の時点でも実装の裏付けを持たない扱いのままです。
実際に立体として読めるかは、送信側がType 186を書き出したか、受信側がそれを解釈できるかで決まります。開発ツールキットのOpen CASCADE Technologyは、Type 186を立体(TopoDS_Solid)へ対応付けると文書化しています(OCCT IGES Support)。
IGESファイルの開き方
目的によって選ぶ道具が変わります。形を見るだけならビューア、編集するならCAD、別の形式へ渡すなら読み込みと書き出しの両方に対応するソフトを使います。
目的 | 手段 | 例 |
|---|---|---|
形を見る、寸法を測る | IGES対応のビューア | CAD Assistant はIGES 5.1と5.3の読み込みに対応し、個人利用・商用利用とも無償です |
形状を編集する | IGES対応のCAD | FreeCAD はSTEPやIGESを含む多数の形式の読み込みと書き出しに対応します |
別の形式へ渡す | 読み込みと書き出しの両方に対応するソフト | CAD Assistant はSTEP・IGES・glTF・OBJ・PLY・STLで保存できます |
開いたあとは、次の順で確かめます。
全体が画面に収まる表示にして、部品の有無と向きを見ます。
既知の寸法を測り、単位と大きさを照合します。
立体として使う予定があるなら、面の集合か閉じた立体かを確認します。
編集や変換をする場合は、元のファイルを残して別名で保存します。
オンラインの閲覧・変換サービスを使う場合は、データが手元の端末で処理されるのか、外部のサーバーへ送られるのかを先に確認します。
STLやSTEPへ変換する
変換は、IGESを読み込めるソフトで開き、目的の形式で書き出す流れです。専用の変換ソフトでも、CADの「名前を付けて保存」でも、行っていることは同じです。
STLへ書き出すと、曲面は三角形の集合に置き換わります。分割の細かさと単位の設定を確認したうえで、書き出したファイルを開き、穴の位置や曲面の形を元と見比べます。
STEPへ書き出しても、元のIGESが面の集合であれば、STEPも面の集合のままです。形式を変えることで、元から持っていない情報が増えるわけではありません。立体が必要なら、送信元に作成元CADからのSTEP出力を依頼するほうが確実です。
STEPとの違いと使い分け
IGESとSTEPは、どちらもCAD間の形状交換形式です。違うのは、中心に置く形状の種類と、規格の更新状況です。立体を受け渡したいならSTEP、相手がIGESを指定する場合や面の形状だけで足りる場合はIGESを選びます。
項目 | IGES | STEP |
|---|---|---|
規格 | ANS US PRO/IPO-100-1996(IGES 5.3・1996年9月23日発行) | ISO 10303。AP203・AP214・AP242などの用途別の規格が置かれている |
拡張子 | .iges / .igs | .step / .stp |
中心となる形状 | 曲線と面 | 面と立体 |
ソリッドの扱い | Type 186ほかの仕組みはあるが、仕様書が未検証としている | AP242など、立体を含む製品データの交換を対象とする |
版の更新 | 5.3より後の版を確認できない | 更新が続いている(AP242は2025年版がある) |
STEP側の版は現在も更新されており、AP242にはISO 10303-242:2025があります。形式全体の位置づけは3Dデータ 拡張子一覧で確認できます。
選ぶときの目安は次のとおりです。
相手がIGESを指定している、または既存の受け渡し手順がIGES前提になっている場合はIGESで書き出します。
受け取った形状を立体として編集・解析に使う場合は、STEPでの再出力を依頼します。
面の形状だけを渡せば足りる場合は、IGESで足ります。
どちらも選べる場合は、送信元CADと受け取り側ソフトの対応形式を先に突き合わせます。
読み込んだあとに詰まる場面と確認の順序
症状は4つに分かれ、見る場所がそれぞれ違います。「開けない」はファイルの並び、「表示されない」は表示設定と属性、「ソリッドにならない」は送信側の書き出し、「寸法が違う」はGlobalセクションの単位が起点です。
症状 | 先に確認する場所 | 次に試すこと |
|---|---|---|
規格に準拠していないと表示され、開けない | ファイルが最後まで取得できているか。末尾に73列目がTの行が1行あるか。各行が80桁で、73列目にS・G・D・P・Tのいずれかが並んでいるか | 送信元へ、別の書き出し設定または別のCADからの再出力を依頼する |
開くが、何も表示されない | 全体表示になっているか。Directory Entryのステータス番号の先頭2桁(Blank Status)。レベル(レイヤ)の表示設定 | 別のIGES対応ソフトでも開き、同じ結果になるか比べる |
面がばらばらで、ソリッドにならない | 送信側がType 186を書き出したか、面の集合として書き出したか | CADの縫い合わせ機能で立体にするか、STEPでの再出力を依頼する |
寸法が想定と違う | Globalセクションのパラメータ14(単位フラグ)と15(単位名) | 既知の寸法と照合し、単位を指定して再出力してもらう |
「PDセクションがない」「ファイル行が80列であることを確認してください」「列66から72に順序番号が含まれていることを確認してください」といったエラーは、どれも固定長の並びを指しています。IGES 5.3の§2.2.4.5.1は、パラメータ行の66〜72列に、そのエンティティのDirectory Entry先頭行の順序番号を入れると定めています。読み込み側は、この対応が取れないと属性と数値を結び付けられません。
何も表示されないときは、表示範囲だけでなくエンティティの属性も確認します。仕様書は、Directory Entryのステータス番号のうち先頭2桁が01のとき、そのエンティティを受け取り側の画面に表示しないと定めています。表示設定やレベルを戻すと見えることがあります。
再出力を依頼するときにそろえる情報
送り直しを頼むときは、何が足りないかを具体的に伝えると、データ側とソフト側のどちらを見直すかを絞れます。
送信元CADの名前とバージョン(Globalセクションのパラメータ5と6で確認できます)
単位(パラメータ14・15)と、期待する寸法の実測値
立体が必要か、面の集合で足りるか
受け取り側で使うソフトと、その対応形式
よくある質問
IGESファイルは、ラスターとベクターのどちらですか
ベクターに近い形式です。IGESは点・曲線・面を数値と数式で記録し、画素の並びを持たないため、拡大しても輪郭は粗くなりません。ただし画像形式ではなくCADの形状交換形式なので、開くにはCADかCAD向けのビューアを使います。
IGESの読み方は
「アイジェス」と読みます。Initial Graphics Exchange Specification の頭文字を取った名称です(IDAJ 用語集)。ファイル名の拡張子は .iges または .igs です。
IGESファイルは編集できますか
IGES対応のCADで読み込めば、面や曲線を動かしたり、形状を足したりできます。一方、元のCADで「どのスケッチをどれだけ押し出したか」という履歴や寸法拘束は入っていないため、寸法値を変えて形を追従させる編集はできません。同じパラメータで設計を続ける必要があるなら、作成元CADのファイルを受け取ります。
まとめ
IGESは、CADの間で曲線と面を受け渡すために作られた交換形式です。拡張子の .iges と .igs に違いはなく、中身は80桁の行が5つのセクションに分かれて並んだテキストです。
受け取ったら、Globalセクションの送信元システム名と単位、そして形状が面の集合か閉じた立体かを確認します。立体の表現は仕様書でも未検証の分類に置かれているため、そのまま設計や解析へ進める前に確かめておくと、手戻りを減らせます。
立体として編集や解析に使う必要があるなら、STEPでの再出力を依頼するのが確実です。IGESを選ぶのは、相手からの指定がある場合と、面の形状だけで足りる場合です。
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