2026.09.08

  • #お役立ちコラム

図面トレースのやり方|手作業と自動変換の違い、内製と外注の決め方

この記事では、トレースの対象になる図面とできあがるデータ、2通りのやり方と手順、自動変換の出力に残る手直し、縮尺や線種で間違えやすいところ、内製と外注の分かれ目を扱います。PDFの形式ごとの変換手順、図面からの文字抽出、特定CADソフトの操作手順は扱いません。

執筆: bestat 編集部

図面トレースとは

図面トレースは、紙・PDF・手書きの図面を見ながら、CADで編集できる線として同じ図面を描き直す作業です。紙をスキャンして画像にする作業とは別で、画像ができたところから始まります。

スキャン画像とCADデータでは、中身の持ち方が変わります。スキャン画像は色の付いた点(画素)が並んでいるだけなので、拡大すれば輪郭がぼやけ、1本の線だけを選んで動かすこともできません。CADの線は始点と終点、線種、線幅、所属するレイヤ(線を分類して重ねる層)を値として持つため、選ぶ、動かす、長さを測る、一部だけ流用するといった操作ができます。

そのため、トレースは元の線をなぞるだけでは終わりません。1本ずつの線に線種と線幅を割り当て、文字と寸法を入力し、どのレイヤへ置くかを決めるところまでが作業に含まれます。

できること

スキャン画像のまま

トレース後のCADデータ

拡大して細部を見る

解像度の範囲まで。それ以上はぼやける

制限なく拡大できる

線を1本だけ選ぶ

できない

できる

寸法を測る

画素数からの換算になる

図面の座標で測れる

形状を変更する

画像編集になり、元の線の情報は残らない

線を移動・伸縮できる

一部を別の図面へ流用する

画像を切り抜いて貼る

要素を選んでコピーする

トレースの対象になる図面とできあがるデータ

入力になるのは、紙図面、スキャン画像、PDF図面、手書き図面です。出力は、DXFやDWGなどCADで編集できる形式です。同じ1枚でも、入力の状態によって作業量は大きく変わります。

入力

状態

作業量に効くところ

紙図面(青焼きを含む)

スキャンしてから作業する

退色、折り目の影、裏写りが判読を妨げる

スキャン画像(TIFF・JPEG)

そのまま下敷きにできる

解像度が低いと細い線と小さい文字がつぶれる

PDF図面

線の情報を持つものと、画像を包んだだけのものがある

後者はスキャン画像と同じ扱いになる

手書き図面

線幅も文字も不揃い

自動変換が効きにくく、人が読み取って描く前提になる

出力形式は、そのデータを開く相手から決めます。DXF(CADソフト間で図面をやり取りするための形式)が指定されることが多く、DWGやJWWを求められる場合もあります。形式名だけでなく対応するバージョンまで先に合わせておくと、開けない、文字が化けるといった差し戻しが減ります。

トレースの先で何をするかによって、どこまで進めるかも変わります。編集して流用するだけなら2Dの線データで足ります。立体として干渉や加工を検討するなら、線データを作った後に3D化の工程が別に必要です(CAD AI自動化で何ができる?範囲・選び方・検証手順)。図面そのものが失われている場合は、トレースではなく現物を測って形状を復元する経路になります(リバースエンジニアリング 図面の作り方)。

図面トレースのやり方は2通り

やり方は、画像を下敷きにして人が描き直す方法と、ラスタベクタ変換(画像に写った線を自動で線データへ置き換える処理)で線を生成する方法の2通りです。どちらを選んでも、最後に人が元図面と照合する工程は残ります。

比べる点

画像を下敷きにして描き直す

ラスタベクタ変換

向く図面

手書き、退色や汚れがある、線が密に重なっている

線がはっきり残り、線幅が揃っている

出力の状態

最初から意図した線種とレイヤで描ける

短い線分に分かれる、文字が図形として出る

人に残る作業

描く作業そのものと、検図(元図面との照合)

出力の整理(結合・分類・文字の入力)と検図

枚数が増えたとき

枚数に比例して時間が増える

設定を固めれば同じ設定を使い回せる

選び分けの目安は、元の線がどれだけはっきり残っているかです。人が見て判読できない箇所は、自動変換でも同じ箇所で崩れます。枚数が少なく1枚あたりの線が多い図面は描き直しが早く、枚数が多く線が単純な図面は自動変換で下地を作るほうが速く進みます。

自動変換のツールを提供する側も、出力をそのまま完成品とは位置づけていません。株式会社NITACOは、自動トレースのサービス「CADトレースAI」のプレスリリースで、出力を初稿と説明しています(PR TIMES 2026年2月26日)。

担当者が確認・修正することを前提とした「精度の高い初稿」を提供する設計で、最終的な内容の確認・承認はすべて担当者が行います

画像を下敷きにして描き直す手順

進める順序は、元図面の確認、取り込みと縮尺合わせ、作図、寸法と注記の反映、検図です。それぞれに次へ進んでよい条件があり、判断を飛ばすと後戻りが大きくなります。

  1. 元図面を確認する: 投影法、尺度、寸法の基準になる面、改訂履歴、表題欄を読み、図面全体が何を表しているかをつかみます。判読できない箇所は先に洗い出し、原図の持ち主へ確認します。→ 描けない箇所が残っていなければ次へ進みます。

  2. 取り込んで縮尺を合わせる: 画像をCADの背景に配置し、寸法が分かっている2点間の長さを実寸に合わせます。→ 離れた別の2点で測った値も記載寸法と一致すれば次へ進みます。

  3. 作図する: レイヤ、線種、線幅、文字の高さを先に決めてから線を描きます。決めずに描くと、後から分類し直す作業が増えます。→ すべての線がいずれかのレイヤに割り当たっていれば次へ進みます。

  4. 寸法と注記を反映する: 寸法値、公差、表面性状、材質、注記、表題欄を入力します。→ 元図面にある文字情報が漏れなく入っていれば次へ進みます。

  5. 検図する: できたデータと元図面を重ね、差分を見ます。重複した線、つながっていない端点、抜けた寸法を確認します。→ 描いた人以外が元図面と並べて違いを指摘できなければ完了です。

2段目と4段目で守るのは、画像ではなく記載寸法を正とすることです。紙のたわみやスキャンのゆがみがあるため、画像上で測った長さは図面に書かれた寸法とずれます。書かれた寸法どおりに描き、画像は形状と位置の目安として使います。

ラスタベクタ変換はどこまでできるか

線がはっきり残った図面なら、形状はおおむね拾えます。ただし出力はそのまま使える図面にはならず、1本の直線が短い線分に分かれ、円弧が細かい直線の連なりになり、文字が意味を持たない図形として出てきます。NITACOも、同社が運営する建設ブログで、かすれた線や重なる文字、経年劣化による汚れの誤認識と、円弧や曲線の検出精度を課題として挙げています(note 2026年4月25日)。

線が細切れになるのは、変換が画素の並びを線に置き換える処理だからです。かすれや汚れで画素が途切れていれば、その位置で線も切れます。文字も線の集まりとして出るため、検索や編集に使うには入力し直します。細切れを減らす手は、次の3段階に分かれます。

  • 変換前: 解像度を上げて取り込み直す、白と黒に分ける明るさのしきい値を調整する、ごみを除去する

  • 変換設定: 直線とみなす角度の許容、線分を結合する距離、円弧として認識するしきい値を調整する

  • 変換後: CAD側で線分を結合し、重複した線を削除し、端点をつなぐ。元画像で切れている線は結合できないため、その箇所は描き直す

手直しを減らす近道は、変換の精度を上げることより、線データにする範囲を絞ることです。図面のすべてを線に起こす必要はありません。国土交通省の「CAD製図基準」は、CADデータで利用するラスタファイル(.TIF)の命名規則を1-5-4で定めており、画像を図面に添付したまま扱う形が公共工事の納品仕様として用意されています(国土交通省 令和7年12月)。参照するだけの背景は画像のまま置き、変更や流用の対象になる部分だけを線データにする分け方ができます。

トレースで間違えやすいところ

間違いが集中するのは、縮尺と用紙サイズ、画像の歪みと記載寸法の食い違い、注記や公差の抜け、レイヤと線種の不統一です。いずれも、描き始める前に決めておかなかったことが原因で起きます。

  • 縮尺と用紙サイズ: 元図面の尺度と用紙サイズを確認せずに描くと、できあがった図面の寸法が実寸と合いません。取り込み時に既知の2点間で合わせ、離れた別の2点で検算します

  • 画像の歪みと記載寸法の食い違い: 紙のたわみやスキャンのゆがみで、画像上の長さは記載寸法とずれます。寸法が書かれている図面では、記載寸法を正とします

  • 注記や公差の抜け: 寸法値だけを写し、公差、表面性状、材質、注記、表題欄の改訂履歴が落ちます。文字情報だけを先に一覧にしてから、入力後に照合します

  • レイヤと線種の不統一: 描く人ごとに割り当てが変わると、後から特定の線だけを取り出せません。描き始める前に決めます

例外になるのが、寸法や座標を持たない図面です。地形図や配置の概略図のように書かれた寸法がない図面では、画像側の形状と縮尺が基準になります。この場合は取り込み時の縮尺合わせが、そのまま出来上がりの精度になります。

割り当てを決めるときの実例として使えるのが、国土交通省の「CAD製図基準」です。同基準は、色、線種、線の太さ、文字の高さ、レイヤ名を条ごとに定めています(国土交通省 令和7年12月)。適用範囲は土木設計業務の詳細設計の成果図面と、土木工事の発注図・完成図で、対象工種は国土交通省直轄事業の34工種です。機械図面や社内の標準にそのまま当てはまるものではありませんが、描き始める前に何を決めておくかの並びとして借りられます。

決める項目

基準が定めている内容

1-5-9

黒、赤、緑、青など16色を基本とする

線種

1-5-10

JIS Z 8312:1999「製図-表示の一般原則-線の基本原則」に定義された15種類を使用することを原則とする

線の太さ

1-5-10

細線・太線・極太線の3種類。0.13、0.18、0.25、0.35、0.5、0.7、1、1.4、2mmから選ぶ。A1では細線0.25、太線0.5、極太線1、寸法線・引出線0.13、輪郭線1.4mm

文字の高さ

1-5-11

JIS Z 8313:1998「製図-文字」に基づき、1.8、2.5、3.5、5、7、10、14、20mmから選ぶ

レイヤ名

1-5-7

責任主体1文字、図面オブジェクト3文字、ユーザ定義領域の順に並べる

内製と外注をどう決めるか

分かれ目になるのは、枚数、期限、元図面の状態、そして図面を社外へ出せるかどうかです。前の3つは費用と日程で判断できますが、最後の1つは金額では決まりません。

条件

内製が向く

外注が向く

枚数

数枚から数十枚

数百枚規模で、期限までに人手が足りない

期限

日程に余裕があり、他の業務と並行できる

特定の期日までに一括で必要

元図面の状態

判読できない箇所を社内で確認する必要がある

状態が揃っており、指示書だけで作業が進む

社外へ出せるか

取引先から預かった図面や開発中の図面が含まれる

持ち出しが認められ、預け先のデータの取り扱いと情報セキュリティの認証を確認できる

外注費を調べると、1枚あたりの金額が2,000円から40,000円まで開いて出てきます。次の値はいずれも受注側、比較メディア、ツール提供側が公表したもので、単位も含まれる作業も揃っていません。

出所

時点

公表されている値

区画線CAD図面製作 きゃどチーム(受注側)

2026年4月5日公開・5月3日更新

1枚あたりA4 2,000〜5,000円、A3 3,000〜8,000円、A2 5,000〜15,000円、A1 8,000〜25,000円、A0 15,000〜40,000円。納期は1〜5枚で3〜5営業日、10枚以上で1〜3週間、特急は20〜50%の割増

おすすめのCADトレース代行業者Navi(比較メディア)

2026年9月7日閲覧

「一般的に日本企業で8,800円から10,000円ほど」。同じページに「A1サイズ:6,500円〜」「9,500円〜/1件」など、単位の違う値が並ぶ

株式会社NITACO(ツール提供側)

2026年2月26日

外注で1枚あたり3,000〜15,000円、100枚規模の案件では30万〜150万円。納期は数週間

金額を比べる前に、次の項目を同じ条件にそろえます。

  • 単位が1枚あたりか、1件あたりか、サイズ別か

  • スキャンが料金に含まれるか、元図面の画像をこちらで用意するか

  • 納品形式と、開く側が対応するバージョン

  • レイヤ、線種、線幅、文字の高さを誰が指定するか

  • 修正の回数と、追加費用になる条件

  • 納期と、特急を頼んだときの割増

トレースの目的が2D図面の3D化であれば、2Dの線データを経由しない経路もあります。bestatは2D CADトレースの代行を提供していませんが、3D.Core CAD Agentでは、AIエージェントが図面を読み取り、3Dモデリングを自動化します(note「Monthly bestat 3月号」)。読み取った寸法と生成された形状が元の図面と合っているかは、人が確かめます。→ 3D.Core CAD Agent へ問い合わせる

よくある質問

褪色や汚れのある古い図面でもトレースできますか

できます。ただし判読できない箇所は、トレースしても復元できません。青焼きの退色、折り目の影、裏写りがある図面は、スキャンの段階でグレースケールにして階調を残し、コントラストを調整します。それでも読めない寸法や注記は、別の改訂版の図面、現物の実測、当時の担当者への確認のいずれかで補います。外注する場合、元図面の状態が悪いほど費用が高くなると明記している業者もあります(区画線CAD図面製作 きゃどチーム、2026年4月5日公開・5月3日更新)。

図面トレースの納期はどれくらいですか

公表されている外注の目安は、枚数で分かれます。区画線CAD図面製作 きゃどチームは、1〜5枚程度で3〜5営業日、10枚以上で1〜3週間、特急対応は1〜2営業日で20〜50%の割増としています(2026年4月5日公開・5月3日更新)。株式会社NITACOは、外注の納期を数週間としています(2026年2月26日)。どちらも受注側とツール提供側の公表値で、元図面の状態と指示の細かさで変わります。

トレースしたCADデータから3Dモデルは作れますか

作れます。ただし線データがあれば自動的に3Dになるわけではなく、三面図がそろっているか、寸法が欠けていないか、尺度が読み取れるかが前提になります。目的が3D化であれば、2D CADへのトレースを先に終わらせる必要があるかを確認します。図面から直接3Dデータを作る経路もあり、その場合はトレースの工程を挟みません。できあがる3Dデータの形式は用途で分かれます(3Dデータ 拡張子一覧)。

取引先から受け取った図面をトレースしてよいですか

発注元との取り決めで決まります。国土交通省の「CAD製図基準」1-7は、CADデータ作成において利用する部分データ等が著作権法上の保護を受けている場合があるので、取扱いについては留意すると定めています。図面を預かる契約や仕様書に、複製、改変、第三者への開示の範囲が書かれていることがあります。外注に出す場合は、社内で描き直すこととは別に、社外へ渡してよいかを確認します。

まとめ

  • 図面トレースは、画像を見ながらCADで描き直す作業。線種、線幅、レイヤ、文字の高さを割り当てるところまでが含まれる

  • やり方は手作業と自動変換の2通り。自動変換の出力は初稿にあたり、線分の結合、文字の入力、検図が人の側に残る

  • 内製と外注は、枚数、期限、元図面の状態、社外へ出せるかで分かれる。公表されている単価は単位も含まれる作業も揃っていないため、前提をそろえてから比べる


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bestat 編集部について

bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。https://bestat-data.com/3dcore

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