2026.09.08

  • #お役立ちコラム

CAD・CAM・CAEの違い|役割の分担とデータの流れを整理

CAD・CAM・CAEは、どれも「CA」で始まる似た形の略語ですが、3つを並べて1つを選ぶ性質のものではありません。

この記事では、3語の正式名称と読み方、それぞれが何をして何を出すのか、設計データが解析と加工へどの順で渡るのか、受け渡しで落ちる情報までを整理します。製品ごとの機能や価格の比較は扱いません。

執筆: bestat 編集部

CAD・CAM・CAEの違い

3つは同じ役割を奪い合う製品ではなく、設計・検証・加工準備という別の工程を受け持ちます。共通する「CA」はComputer Aided(コンピュータ支援)で、後ろの1文字が支援する対象を表します。

日本産業規格のJIS B 3401:1993「CAD用語」も、この3語を製品名としてではなく、進め方や行為として定義しています(日本規格協会)。

正式名称

何をするか

出てくるもの

CAD

Computer Aided Design

形状と属性のモデルをコンピュータ内に作り、設計を進める

3D形状モデル、2D図面

CAM

Computer Aided Manufacturing

モデルをもとに、生産に必要な情報を作る

工作機械へ渡すNCプログラム

CAE

Computer Aided Engineering

CADのモデルを使い、強度・熱・振動などを計算で確かめる

応力、変形、温度、流速などの解析結果

読み方は、CADが「キャド」、CAMが「キャム」で定着しています。CAEは「キャイ」「キャエ」と読む場合と、アルファベットのまま「シーエーイー」と読む場合があり、人や職場によって分かれます。

CADとは

CADは、製品の形を数値のモデルとしてコンピュータの中に作り、そのモデルで設計を進めることです。JIS B 3401:1993 は「製品の形状,その他の属性データからなるモデルを,コンピュータの内部に作成し解析・処理することによって進める設計」と定義しています。

定義に「図面」の語が入っていない点は、実務の感覚と少しずれます。規格は、モデルから図面を描くことを別の用語として立て、自動製図を「コンピュータ内部に表現されたモデルに基づいて,対象物の図面を自動化装置によって描くこと」と定義しています。規格の立場では、中心にあるのはモデルで、図面はそこから出てくる成果物の一つです。

実務で「CADで作ったデータ」と呼ばれるものには、次のようなものがあります。

  • 機械部品の3Dモデル。穴やRの寸法を持ち、組み立てた状態で干渉を確認できます

  • 2Dの製作図。寸法、公差、材質、表面処理の指示が線と文字で入っています

  • 工場や建物のレイアウト図。柱、壁、配管、設備の位置関係を持ちます

  • 基板の配線パターン。部品の配置と電気的なつながりを持ちます

同じ「CADデータ」でも、持っている情報はこれだけ違います。3Dの形状が前提になる工程へ渡す場面では、2D図面しか残っていなければ、先に形を起こす作業が挟まります。この工程をAIで自動化する動きは CADのAI自動化 で整理しています。図面も残っておらず現物しか無い場合は、リバースエンジニアリングと図面 が該当します。

CAMとは

CAMは、CADで作ったモデルから、工作機械が読める指示を組み立てることです。JIS B 3401:1993 の定義は「コンピュータの内部に表現されたモデルに基づいて,生産に必要な各種情報を生成すること,及びそれに基づいて進める生産の形式」で、NCプログラムの作成だけに限られていません。

NC(数値制御)プログラムは、工具をどの経路で、どの速度で動かすかを数値で書いた指示です。この書式は日本産業規格 JIS B 6315-1:2013 が規定しており、序文はこれを「通常“G コードプログラミング”又は“ISO プログラミング”と呼ぶ」と説明しています。

CAMの中では、おおよそ次の順で作業が進みます。

  1. CADモデルを読み込み、加工したい形状と、削る前の素材の形を用意します。

  2. 加工工程を決めます。どの面をどの向きで固定し、荒取りと仕上げをどう分けるかを整理します。

  3. 工具経路(ツールパス)を作ります。工具の種類、回転数、送り速度、切り込み量を指定します。

  4. 動きを画面上で再生し、工具やホルダが素材・治具・機械にぶつからないかを確認します。

  5. ポストプロセッサで、使う工作機械に合わせた書式のNCデータへ変換して出力します。

CAMが出すのは形ではなく、機械を動かす手順です。同じ部品でも、3軸か5軸か、旋盤かマシニングセンタかで工程も工具経路も変わるため、モデルが同じでもNCプログラムは1つに決まりません。

CAEとは

CAEは、作る前に、モデルを使って壊れ方や熱・流れを計算で確かめることです。JIS B 3401:1993 は「CADの過程でコンピュータ内部に作成されたモデルを利用して,各種シミュレーション,技術解析など工学的な検討を行うこと」と定義しています。

定義が「CADの過程で……作成されたモデルを利用して」と始まる点に、3語の関係が現れています。CAEは単独では始められず、CADが作ったモデルを入力として受け取ります。

解析は、調べたい物理現象ごとに分かれます。日本機械学会の計算力学技術者資格が、固体力学分野・熱流体力学分野・振動分野の3区分を置いていることからも、分野の分かれ方が確認できます(日本機械学会)。

分野

調べること

固体力学

力を加えたときの応力と変形

荷重をかけた部品が壊れないか、たわみが許容内に収まるか

熱流体力学

熱の伝わり方と流体の流れ

筐体内の温度が上がりすぎないか、配管の圧力損失はどれくらいか

振動

揺れやすい周波数と応答

回転機械が共振しないか、輸送中の振動に耐えるか

解析にかける前に、CADの形状モデルは要素の集まり(メッシュ)へ置き換えられます。要素の細かさや形は結果に影響するため、モデルを投入すれば答えが出る工程ではありません。荷重や拘束、材料の物性値も、モデルとは別に指定します。

CAD・CAM・CAEはどうつながるのか

3つは1つの形状モデルを共有します。CADで作ったモデルがCAEとCAMの入力になり、CAEの結果は設計へ戻り、CAMの出力は工作機械へ進みます。

JIS B 3401:1993 は、この組み合わせ方も用語として定義しています。CAD/CAMは「CADによってコンピュータ内部に表現されるモデルを作成し,これをCAMで利用することによって進める設計・生産の形式」です。CIMは、企画から設計・製造・販売・保守までの活動をコンピュータ技術で1つのシステムに統合しようとする考え方として定義されています。

一般的な流れは次のようになります。

  1. CADで形状モデルを作ります。

  2. CAEでモデルを解析し、強度・熱・振動の見通しを得ます。

  3. 結果が条件を満たさなければ、CADへ戻って形状や材質を変えます。ここは何度か往復します。

  4. 形状が固まったら、CAMで加工工程と工具経路を作り、NCプログラムを出力します。

  5. 工作機械がNCプログラムを読み、素材を削ります。

ただし、この5段を一直線に描くと、CAEとCAMの性質の違いが消えます。CAEはモデルをメッシュへ置き換えて計算し、結果を設計へ返すため、設計の内側の往復です。CAMはモデルを工具経路へ置き換えて機械へ渡すため、設計の外へ出る一方通行です。同じモデルから出発しても、向かう先も戻り方も違います。

データの受け渡しでつまずくところ

同じモデルでも、工程ごとに別の形へ変換されます。変換のたびに元の情報の一部が落ちるため、「開けたのに使えない」が起きます。

CADとCAMが同じ製品にまとまっていれば、モデルはそのまま読み込めます。別のCADから受け取る場合は、交換形式を経由します。ネイティブ形式(そのCAD固有の保存形式)は履歴やパラメータを保ちますが、他社ソフトでは開けないことがあります。中立形式(STEPやIGESなど、複数のソフトが読める形式)は開けますが、設計履歴や拘束条件は落ちます。形式ごとの違いは 3Dデータの拡張子一覧 で整理しています。

受け渡し

変換されるもの

一緒には渡らないもの

CAD → CAD

形状(中立形式を経由する場合)

設計履歴、パラメータ、拘束、注記や公差の一部

CAD → CAE

形状 → メッシュ

荷重・拘束・材料の物性値。細部は解析の都合で単純化することもある

CAD → CAM

形状 → 工具経路

図面側の指示(公差、表面粗さ、加工指定)は人が読み取って設定する

CAM → 工作機械

工具経路 → NCプログラム

機械ごとの書式の差。ポストプロセッサで吸収する

最後の行に、CAMが機械ごとの設定を必要とする理由があります。JIS B 6315-1:2013 の序文は、規格に沿って書いてもNCプログラムがそのまま別の機械で通るわけではないと明記しています(日本規格協会のプレビュー版)。

この規格を適用したとしても,異なる工作機械間での機械制御プログラムの互換性を保証するものではない。

だからCAMは最後にポストプロセッサを通します。書式が規格化されていることと、どの機械でも動くことは別の話で、その差を埋める変換が機械ごとに要ります。

1本のソフトにまとめるか、分けるか

3つの機能が1つの製品に入っているものと、別々のものがあります。どちらが向くかは、扱う形状と使う機械、そしてどの工程を内部で持つかで決まります。

構成

内容

向く場面

CAD単独

設計だけを行う

加工を外部へ委託し、モデルと図面を渡す

CAD/CAM一体型

同じ環境でモデル作成と工具経路作成を行う

設計から加工までを一貫して行い、形状変更が加工へすぐ反映される必要がある

CAM専用

他社CADのデータを読み込み、加工の準備に専念する

受託加工で、顧客ごとに違うCADのデータが届く

CAE専用

解析に特化する

解析の規模が大きい、または専用の解法や設定が要る

3つを統合した環境

設計・解析・加工準備を同じ環境で扱う

設計変更のたびに解析と加工の作り直しが発生する

一体型や統合型は、読み込みの手間が減る点で有利です。ただし変換が不要になるのは同じ製品の中だけで、外部から別形式のデータを受け取る限り、読み込みと確認の工程は残ります。

構成を選ぶときは、次を先に確認すると条件が絞れます。

  • 加工を内部で行うか、外部へ委託するか。委託するならCAMは不要で、渡す形式と添える指示を決めることが仕事になります

  • データがどこから来るか。顧客ごとに違うCADのデータが届くなら、読み込める形式の範囲が効きます

  • 解析をどこまで行うか。設計者が簡易的に確認するのか、専任者が詳細に解くのかで必要な機能が変わります

  • 使う工作機械の種類と軸数。その機械に対応するポストプロセッサが用意されているかを1台ずつ確認します

よくある質問

「CAD/CAM」とだけ書かれているのは何を指しますか

産業の文脈では、CADで作ったモデルをそのままCAMで使う進め方を指します。JIS B 3401:1993 の定義もこれに当たり、設計と生産をひと続きにした形式を意味します。一方、歯科で使われる「CAD/CAM冠」は、口の中を計測したデータから被せ物を設計し、機械で削り出して作る補綴物を指します。略語は同じでも対象が異なるため、どちらの文脈で書かれた記述かを先に確認します。

CAEを使うのに資格は要りますか

解析ソフトを使うための免許はありませんが、技術レベルを示す認定資格はあります。日本機械学会の計算力学技術者(CAE技術者)資格認定は、解析品質の保証や製品の開発効率・性能・安全性の向上を実現するための技術レベルが、社内外で正しく評価されることを目的とした制度です(日本機械学会)。等級は上級・1級・2級の3つで、分野ごとに認定されます。解析を外部へ委託する場合や、結果をどこまで信頼してよいかを確かめたい場合の目安になります。

まとめ

  • CAD・CAM・CAEは並べて選ぶ製品ではなく、設計・検証・加工準備という別の工程を指します。JIS B 3401:1993 も、3語を製品名ではなく進め方として定義しています。

  • 3つは1つの形状モデルを共有します。CAEはモデルをメッシュへ置き換えて結果を設計へ返し、CAMは工具経路へ置き換えて工作機械へ渡します。

  • 受け渡しのたびに形は変わり、設計履歴や図面の指示は自動では伝わりません。NCプログラムも、書式が規格化されていても機械が違えば互換性は保証されないため、機械ごとの変換が要ります。


bestat 編集部について

bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画などから3Dデータを生成・処理・活用する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。

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