2026.09.07

  • #お役立ちコラム

点群ノイズ除去の手順|原因の見分け方と消しすぎの確かめ方

点群のノイズ除去で迷うのは、消す操作そのものより「どこまで消すか」の線引きです。消し足りなければ面が作れず、消しすぎれば確かめたかった形まで無くなります。

この記事では、ノイズの見え方と原因の分け方、除去に取りかかる前に決めること、消す順序、地面と地物を分ける分類、そして消しすぎていないかを確かめる方法を扱います。点の数を減らす間引きや、業務で使う座標系へ載せ替える作業は工程が別なので、位置づけを示すところまでにとどめます。

執筆: bestat 編集部


点群のノイズとは

点群のノイズは、測ろうとした対象以外の場所にできた点と、対象の面から外れた位置に付いた点に分かれます。前者は範囲や物のまとまりとして外せますが、後者は消しすぎると面そのものが痩せます。目の前の点がどちらなのかを、先に見分けます。

現場のデータで見かける形は、おおむね次の3つです。

  • 浮遊点:対象から離れた空中に、まばらに散らばる点です。反射、粉塵、雨滴などで生じます

  • 面のばらつき:1枚であるはずの面が、厚みを持って見える状態です。測定のばらつきが面に沿って積もります

  • 写り込み:通行する人や車両、養生シート、可動部の途中位置など、対象外の物そのものが点になったものです

同じ設備を断面で見たときに、浮遊点・面のばらつき・写り込みが点群のどこに現れるかを示した図

点が無い場所は欠測で、ノイズとは扱いが別です。国土地理院の地上レーザ測量システムを用いた三次元点群合成マニュアルは、器械の仕組みから、一般的に地上レーザスキャナ直下の点群データは取得できないと書いています。空いている場所を、消す操作で埋めることはできません。

ノイズは、データ形式の規格でも点の属性として定義されています。点群の受け渡しに使うLASは、米国の写真測量・リモートセンシング学会 ASPRS が策定した標準形式です。その仕様1.4では、点ごとに付ける分類値の7が Low Point (noise)、18が High Noise に割り当てられています(LAS Specification 1.4)。ノイズと判定した点を、消さずに印だけ付けて持ち運べる仕組みがあるということです。

点そのものが持つ情報の中身は、点群データとは|仕組み・取得方法・3Dモデルとの違いで扱っています。

ノイズが発生する原因

原因は、測るときの環境、対象の材質、対象外の物の写り込みの3つに分かれます。どれに当たるかで、除去で対処できるのか、測り直すしかないのかが変わります。

原因

点群での見え方

除去で対処できるか

環境(雨・雪・粉塵・風・振動)

空中の浮遊点、面の厚み

できる

環境(特徴の少ない場所での移動計測)

対象の形そのものが伸びる、ずれる

できない。測り直す

材質(透明・光沢・艶のある黒)

点が付かない、面から浮いた点が出る

一部だけ。欠測は埋まらない

写り込み(人・車両・仮設物・可動部)

面として点が詰まった塊

できる。残すかの判断は要る

測る環境によるもの

屋外では、雨滴や雪、粉塵がレーザーを反射して空中に点を作ります。風で対象や機器が揺れれば、本来1枚の面が厚みを持ちます。ここまでは除去で対処できる範囲です。

移動しながら測る機器では、環境が形そのものの歪みを生みます。日本建設機械施工協会の機関誌『建設機械施工』に載った報告「SLAMを用いた3次元測量」は、SLAM(自己位置推定と地図作成を同時に行う技術)でグラウンドを計測した例を挙げています。一見すると問題が無いように見えるものの、細部を確認するとサッカーゴールが伸びている、という例です。報告は、自己位置推定が正しく処理されないと計測対象物の形状を大きく変形させることになると書いています。

同じ報告は、特徴点を捉えにくい計測環境として、広く平坦な場所、直線の廊下やトンネル、模様のない壁、密集した竹藪、人混みの5つを挙げています。この種の歪みは点を消しても直らないため、除去を続ける前に、形が歪んでいないかを先に見ます。

対象の材質によるもの

点が付くかどうかは、対象の表面が光をどう返すかで変わります。大阪産業技術研究所の「3Dスキャナ利用ガイド」は、縞状の投影光をカメラで撮影する測定原理上、透明な素材や光沢面は測定できないと書いています。同研究所は測定が難しいケースの説明で、特に艶ありの黒色(ピアノブラック)を挙げています(3Dスキャナ測定が難しいケース)。

この種の面では、点が付かない欠測と、面から浮いた点の両方が起きます。除去で消せるのは後者だけで、欠測は測り方を変えるか、反射防止の処理を加えるかで対処します。

対象外の物の写り込み

計測中に通行した人や車両、養生シート、仮設足場、可動部の途中位置は、対象と同じように面として点が詰まります。まわりに点が少ないという手がかりが使えないため、残すか消すかは人が決めることになります。

bestatが稼働中の工場で行った実証では、工場全体をFARO製3Dスキャナーで計測し、一部の設備はスマートフォンで撮影して併用しました(出典)。取得手段を混ぜたデータでは、範囲ごとに点の密度が揃いません。後述する除去の方法はいずれも点の密度を手がかりにするため、しきい値を全体へ一律に当てると、密度の低い範囲だけが強く削られます。

写真から点群を作る場合は、レーザーで測る場合とノイズの出方が変わります。撮影の重なりが足りない範囲や、模様の少ない面では、形の推定そのものがぶれるためです。

▶ 関連記事: フォトグラメトリとは?|仕組み・やり方・メリット・精度を解説SfM処理の仕組みとは?|写真から3Dを復元する5工程

ノイズ除去の前に決めること

何を残すかを先に決めないと、消す基準が作れません。ある点がノイズかどうかは点の性質だけでは決まらず、そのデータで何を確かめるかによって変わります。

国土地理院の三次元点群合成マニュアルは、フィルタリングの対象項目について次のように書いています(出典)。

フィルタリング処理は、地形以外の計測点を全て除去することが目的であるが、利用目的によっては地物を残す場合もある。そのため、除去する対象項目又は残存させる対象項目を定める必要がある。

公共測量の作業手順を定めた文書ですが、消す前に残す対象を決めるという順序は、対象が地形でなくても使えます。着手前に次の3つを書き出します。

  1. このデータで何を確かめるかを1文で書きます(干渉の有無、寸法、現況の共有など)

  2. 残す対象と消す対象を、物の名前で挙げます(架台は残す、通行者は消す、養生シートは保留、というように)

  3. 元のデータを別に保存し、除去後のデータと分けて持ちます

「消す」と「減らす」も分けておきます。要らない点を取り除くのが除去で、残すと決めた点の数を間引くのが軽量化です。目的が違うので、同じ操作としてまとめて扱うと、残すはずの点まで消えます。

ノイズを消す順序

粗い操作から順に当てます。対象外の範囲をまとめて切り、次に明らかに離れた点を外し、最後に面のばらつきを整える順です。逆にすると、範囲外の点を含んだまま近傍の分布を計算することになり、しきい値が実態とずれます。

  1. 位置合わせを終えます。複数のスキャンを1つの座標系へ合成してから、不要な点の判断に入ります

  2. 対象の範囲を切ります。高さと平面の範囲を指定し、確かめたい対象の外側をまとめて外します

  3. 明らかに離れた点を外します。指定した半径の中に決めた個数以上の近傍点が無い点を外す方法(Radius Outlier Removal)が、空中の浮遊点に向きます

  4. 面のばらつきを整えます。各点から近傍点までの平均距離を求め、その分布の外側にある点を外す方法(Statistical Outlier Removal)が、面の周りの細かなばらつきに向きます

国土地理院のマニュアルも、点群を合成した後の処理として、計測条件を参考に必要に応じて不要な計測点を削除することを求めています。位置が確定する前に消すと、合成をやり直したときに判断も最初からやり直しになります。

しきい値は元の点間隔から決めます。半径も平均距離も、点がどれだけ密に並んでいるかを基準にした値なので、密度の違うデータへ同じ数値を持ち込むと、結果が変わります。

なぜ面を作る前に消すのか

ノイズを残したまま面を作ると、通路の真ん中に壁ができたり、空中の点が三角形で結ばれてトゲ状の面になったりします。面ができた後にそれを消すのは、点の状態で消すより手間がかかります。面の側で削れば、隣り合う面の形も一緒に変わるためです。

間引きと分類は、除去の後に置きます。要らない点を先に外しておけば、間引きのときに残す点の選び方も、分類のときのラベル付けも、対象だけを見て決められます。面を作る工程の全体像は点群メッシュ化の手順|変換の流れ・面の調整・メッシュサイズの決め方で扱っています。

地面と地物を分ける

分類は、点を消す操作ではなく、点にラベルを付けて後から選び直せるようにする操作です。地面だけを見たいときも、建物だけを取り出したいときも、同じデータから切り替えられます。

国土地理院の三次元点群合成マニュアルは、この作業をフィルタリングと呼び、次のように定義しています。

「フィルタリング」とは、オリジナルデータから、建物・構造物、樹木・植生等、地表面以外のデータを除去する作業をいう。

ここでの除去は、地表面だけを表すグラウンドデータを作る操作を指します。マニュアルがオリジナルデータと呼ぶ元の点群は、そのまま残ります。

ラベルの中身は規格で決まっています。LAS形式の仕様1.4が定める分類値のうち、地形と地物の切り分けで使うものは次のとおりです。

分類値

意味

1

Unclassified(未分類)

2

Ground(地面)

3〜5

Low / Medium / High Vegetation(低・中・高の植生)

6

Building(建物)

7

Low Point (noise)(低い位置のノイズ点)

9

Water(水面)

18

High Noise(高い位置のノイズ)

同じ仕様には Withheld というフラグもあり、これを立てた点は処理に含めない(Deleted と同義)と定義されています。点を残したまま、処理から外す指定だけを付けられるということです。

分類が効くのは、同じデータを別の用途へ回す見込みがある場合です。屋内の設備を1回だけ見る用途なら、範囲を切って浮遊点を外すところで足ります。ラベル付けは工数が増えるため、後から選び直す場面があるかどうかで決めます。

消しすぎていないかを確かめる

消す前と後を同じ視点で見比べ、判断に使う形が残っているかを確認します。除去は精度を上げる作業ではなく、かけ方によっては精度を落とす側にも働くためです。

大阪産業技術研究所の3Dスキャナ利用ガイドは、同研究所の光学式3Dスキャナについて次のように書いています。

センサヘッド単体の測定精度は0.01~0.03mmですが、測定物の表面性状や色調によって測定値が変わるうえ、撮影データ合成時の貼り合わせ誤差、ノイズ除去処理等でも精度が悪化します。

ノイズ除去処理が、貼り合わせ誤差と並んで精度を悪化させる要因に挙がっています。同ガイドは、生成した3次元ポリゴンデータの精度は0.05〜0.1mm程度を目安にするよう書いています。センサ単体の値とは桁が1つ違い、その差には除去のかけ方も含まれます。

除去の前後を比べ、形が残っている・判断に使う面が薄くなった・部位が消えたの3状態を並べた図

判定は3つの状態で行います。

  • 形が残っている:面の輪郭と、確かめたい部位のエッジが除去の前後で一致します

  • 判断に使う面が薄くなった:面は見えるものの点が減り、断面を取ると線が途切れます

  • 消えた:部位そのものが無くなり、欠測と見分けが付きません

手順としては、同じ位置の断面を除去の前後で重ね、判断に使う寸法を両方で測って差を見ます。差が出たときは、消したのがノイズだったのか対象の面だったのかを、保存しておいた元のデータへ戻って確かめます。

国土地理院のマニュアルは、座標の基準に使う標識について、標識に照射された点群データの一部を除外しないよう求めています。基準に使う対象の点は、まばらに見えても消さないという趣旨です。同じ考え方は、寸法の根拠にする部位にもそのまま当てはまります。

除去をやり直しても見え方が変わらない場合は、原因が計測の側にあります。点の密度が足りていない、そもそも見えていない面がある、といった状態は、後工程では埋まりません。この切り分けは点群データ デメリット6選|失敗を防ぐ対策と導入判断のポイントで扱っています。

自動処理はどこまで任せられるか

自動で外せるのは、まわりに点が少ない点までです。写り込みは対象と同じように面として点が詰まっているため、密度を手がかりにする判定では外れ値になりません。

同じ半径で周囲を見ると、面の点には多くの近傍点があり、浮遊点にはほとんどありません。この位置関係が、浮遊点を自動で見つける手がかりになります。

同じ半径内に近傍点が多い面上の点と、近傍点が少ない浮遊点の違いを示した点群の近傍図

工程

自動処理の範囲

対象範囲の切り出し

座標を決めれば自動。範囲をどこにするかは人が決める

空中の浮遊点の除去

自動。しきい値は元の点間隔から決める

面のばらつきの平滑

自動。かけすぎると角が丸まる

写り込みの判定

人が判断する。可動部・仮設物・通行者は形として成立している

地面と地物の分類

自動処理がある。誤分類の確認は残る

浮遊点を残したままメッシュ化すると、離れた点まで三角形で結ばれてトゲ状の面ができます。点群の段階でノイズを外してから面を作ると、この誤った形を避けられます。

浮遊点を残してメッシュ化するとトゲ状の面ができ、先に除去すると平らな面になる変化を示した前後比較図

分類を学習した処理へ任せる取り組みは進んでおり、点群処理ソフトにも自動のノイズ処理機能が載っています。それでも、通行者を消して可動部を残すといった判断は、そのデータを何に使うかを知っている側にしか決められません。自動処理へ渡す前に残す対象と消す対象を決めておくと、後から人が判断をやり直す量が減ります。点群にAIを使うときの工程は点群AIとは|できること・活用例・仕組みと導入手順をわかりやすく解説で扱っています。

点群の処理をどこまで手元で行い、どこから任せるかを決める段階なら、扱うデータの範囲と確かめたい形を伝えて相談できます。→ 3D.Core for Point Cloud について相談する

よくある質問

ノイズを消すとファイルは軽くなりますか

多少は軽くなりますが、容量を落とす手段としては効きにくい作業です。ファイルの大きさは残った点の数で決まり、その大半は対象そのものを表す点だからです。除去はこの点を残す作業なので、容量は大きく変わりません。容量を目的にする場合は、間引きや圧縮といった別の手段を選びます。

ノイズ除去は計測業者に頼めますか

頼めます。ただし発注のときに、残す対象と消す対象を書いて渡さないと、判断が相手側に委ねられます。国土地理院のマニュアルも、対象項目を定めることが難しい場合は、成果品の利用目的を明らかにして、作業機関または測量に精通した関係者と相談のうえ定めることが可能だとしています。何に使うデータかを先に伝えるところから始めます。

一度消した点は元に戻せますか

作業のしかたによります。元のファイルへ上書き保存すると戻せないため、除去前のデータを別に保存しておきます。LAS形式のように分類値やフラグを持つ形式であれば、点を消さずに処理から外す指定だけを付けられるので、後から選び直せます。どのしきい値でどの範囲を消したかを記録しておくと、やり直すときの起点になります。

まとめ

点群のノイズは、測り方から出る浮遊点や面のばらつきと、対象外の物の写り込みに分かれます。前者は自動処理で外せますが、後者は面として点が詰まっているため、残すか消すかの判断が人の側に残ります。

順序は、範囲を切る、明らかに離れた点を外す、面のばらつきを整えるの順です。この順で当てるために、着手前に残す対象と消す対象を物の名前で書き出しておきます。

作業を終えたら、同じ位置の断面を前後で重ね、判断に使う寸法を両方で測って差を見ます。形が歪んでいる場合や、除去をやり直しても見え方が変わらない場合は、原因が計測の側にあります。消す作業を続けず、測り直す範囲を決める判断へ移ります。


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bestat 編集部について

bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画などから3Dデータを生成・処理・活用する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。https://bestat-data.com/3dcore

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