2026.09.02

  • #お役立ちコラム

写真の3D化とは|3Dスキャナーとの違いと必要な写真の条件

写真から3Dデータを作る手段は、この数年で増えました。複数枚を撮って形を復元する方法に加えて、生成AIが1枚の画像から立体を作る方法も使えるようになっています。同じ「写真の3D化」と呼ばれていても前提が違うため、出てくるデータの性質はそろいません。

本記事で扱うのは、写真から3Dデータを作ることです。写真に立体感を出す画像加工は扱いません。3Dスキャナーで測るのとの違い、方法ごとの前提、必要な写真の条件、写真からは得られない情報を、公的機関の資料と原論文をもとに整理します。

執筆: bestat 編集部


写真の3D化とは

写真の3D化とは、撮影した画像をもとに、立体の形をコンピュータで扱えるデータにすることです。出てくるのは点の座標の集まりである点群か、それを面でつないだメッシュで、3Dビューアで向きを変えて見たり、3Dプリントの元にしたりできます。

もとになるのが写真なので、写った範囲しかデータになりません。国土地理院の「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」第57条は、撮影コースの位置と写真の重なりについて、次の2点への配慮を求めています。

(1) 実体空白部を生じさせない (2) 隠蔽部ができる限り少なくなるようにする(国土地理院

実体空白部は重なりが足りず立体として復元できない範囲、隠蔽部は手前の物に隠れて写らない範囲です。どちらも撮影の計画で減らすもので、撮り終えた後の処理では取り戻せません。

写真の3D化と呼ばれる手段は、写っているものから形を求める系統と、写っていないところを推定する系統に分かれます。この違いが、あとで寸法を測れるかどうかを決めます。

3Dスキャナーとの違い

3Dスキャナーはレーザーや光を対象に当てて距離を直接測ります。写真からの3D化は、複数の写真に写った見え方の差から距離を計算します。この差は、条件が悪いときの結果に現れます。

写真からの3D化

3Dスキャナー

距離の決め方

複数の写真に写った見え方から計算する

レーザーや光を当てて直接測る

撮影条件の影響

重なり・露出・模様に左右される

光や模様が乏しくても距離が出る

始めるための機材

手元のカメラ

専用の計測機

写真側が崩れる条件は、公的な検証事例に具体的に書かれています。土木研究所が令和3年3月に公開した「橋梁3次元モデルの構築(検証事例)」は、複数の写真からカメラの位置と対象の形を同時に推定するSfM処理を使っています。この検証では、橋に近づいて撮る近景撮影に加えて、より広い範囲を撮る「SfM補完撮影」を導入しました。補完撮影を入れずに近景撮影だけで処理した場合に何が起きるかを、資料はこう説明しています。

なお、SfM 補完撮影を導入せず、近景撮影だけで取得した写真で SfM 処理を行う場合には、写真間の重複率の不足、露出変化などの影響や、平面に対して均一な画像では深度推定しにくい SfM の特徴により、SfM 処理で写真の位置推定ができない不具合、歪み、直交する面同士のマッチングミスによる解析エラーが起こることがある。(土木研究所

崩れる原因として挙がっているのは、写真の重なり、露出(明るさ)の変化、模様のない平面の3つです。3Dスキャナーは自ら光を当てて距離を測るため、この3つの影響を受けにくくなります。写真は手元のカメラで始められるので、機材をそろえる時間が要りません。どちらを選ぶかは、対象と撮影条件で決まります。

写真から3Dにする方法

方法は大きく3つに分かれます。複数枚の写真から形を復元する方法、生成AIが1枚から作る方法、写真を参考にして人がモデリングする方法です。違いは、出てきた形が何を根拠にしているかにあります。

複数枚から復元する

生成AIで1枚から作る

写真を見ながら手作業

入力

多方向から撮った多数の写真

1枚から数枚

参考としての写真

形の根拠

実際に写っている位置関係

学習済みモデルによる推定

作る人の判断

寸法

基準を与えれば測れる

測る根拠がない

作る人が決める

向く場面

実在するものを記録する

見た目を早く用意する

複雑な形や意図を反映する

複数枚から復元する

同じ箇所が複数の写真に写っていることを手がかりに、位置関係から形を割り出す方法です。フォトグラメトリ、日本語では写真測量と呼びます。米国の写真測量・リモートセンシング学会 ASPRS は、この語を次のように定義しています。

Photogrammetry is the art, science and technology of obtaining reliable information about physical objects and the environment through processes of recording measuring and interpreting images and patterns of electromagnetic radiant energy and other phenomena.(ASPRS

recording measuring and interpreting、つまり記録し、計測し、解釈する過程が定義に含まれています。実際に写っている情報から形を求めるため、測った結果として扱える点が、ほかの2つの方法と異なります。基準になる長さを一緒に写しておけば、あとから寸法を出すこともできます。

生成AIで1枚から作る

生成AIに画像を渡すと、写っていない裏側まで含めて立体を作ります。速度は手法によりますが、2024年公開の TripoSR は1枚の画像から0.5秒未満でメッシュを生成すると報告しています(arXiv:2403.02151)。

出てくる形は推定です。単一画像からの視点生成でよく参照される Zero-1-to-3(コロンビア大学・2023年)は、この課題の性質をこう書いています。

To perform novel view synthesis in this under-constrained setting, we capitalize on the geometric priors that large-scale diffusion models learn about natural images.(arXiv:2303.11328

under-constrained setting は条件が足りない状態、geometric priors は大規模なモデルが自然画像から学んだ形の事前知識を指します。裏側が「それらしい形」になるのは、足りない条件を学習済みの知識で補うという設計から来ています。実物と一致している保証はないため、寸法を測る用途には向きません。

写真を見ながら手作業でモデリングする

写真を参考にして、CADや3DCGのソフトで人が形を作る方法です。手間はかかりますが、どこを正確に作り、どこを省くかを作る側が決められます。実物から寸法を測って設計データに戻す作業はリバースエンジニアリングと呼ばれ、写真はその参考資料として使われます。

必要な写真の条件

複数枚から復元する方法では、撮り方が結果をほぼ決めます。前の節で挙がった重なり、明るさ、模様の3つに、枚数の見当を加えた4点を押さえます。

隣り合う写真を大きく重ねる

同じ箇所が複数の写真に写っていないと、その部分の位置が決まりません。国土地理院のマニュアル第57条は、重複度(隣り合う写真が同じ範囲をどれだけ共有しているか)の標準をこう定めています。

撮影後に実際の写真重複度を確認できる場合には、同一コース内の隣接空中写真との重複度が 80%以上、隣接コースの空中写真との重複度が 60%以上を確保できるよう撮影計画を立案することを標準とする。撮影後に写真重複度の確認が困難な場合には、同一コース内の隣接空中写真との重複度は 90%以上、隣接コースの空中写真との重複度は 60%以上として撮影計画を立案するものとする。(国土地理院

進行方向の基準が、撮影後に重なりを確認できる場合は80%以上、確認が難しい場合は90%以上と分かれています。確認できない不確かさを、あらかじめ重なりの余裕で見込む決まりです。

橋のような構造物でも設定値は近い水準です。土木研究所の検証事例は、近景撮影について進行方向のラップ率80%、隣接コースのラップ率50%としています。ただし同資料は、対物画素寸法やラップ率などの数値を「計算方法の解説を目的として記載した値」と断っており、一般的な推奨値ではありません。

いずれもUAVで屋外を撮る場合の規定と設定値です。手持ちのカメラで小さな対象を撮るときに同じ数字が当てはまるわけではありませんが、隣の写真と大きく重ねるという考え方は共通します。

明るさを確保し、強い陰を避ける

第57条の【解説】は、撮影を気象条件の良い時期と時間に計画するよう求め、理由を2つ挙げています。1つは画像のブレで、露光時間が短くなるよう明るい時間帯に行う必要があるとしています。もう1つは陰で、太陽高度が低い場合は陰の影響が生じるため注意が必要だとしています。

屋内でも考え方は同じです。Adobe が Substance 3D Sampler の3Dキャプチャ機能向けに公開していた撮影ガイドは、天窓や周囲の複数の窓から入るような均一な自然光で撮ることを勧めていました。対象についても、あまり反射しないマットなものが望ましいとしています(Adobe)。

この機能自体は、すでに使えません。同じページの冒頭に "Support for 3D Capture has been removed as of Sampler version 5.1." と記載があり、Sampler 5.1 以降で3Dキャプチャの提供が終了しています。ここでは撮影条件の記述としてだけ参照しています。

模様のない面には手がかりを足す

つるつるした白い壁、透明なガラス、鏡面の金属は、写真の中で見分けが付く手がかりが少なく、形が崩れます。第57条の【解説】は、この場合の対策を挙げています。

計測対象範囲においてマッチングしやすい目印が多ければ、三次元形状復元計算におけるマッチングの精度が向上する可能性がある。そのため、撮影前に、現況を見ながら、目印(例えば、対空標識やポール等)を設置したり、白線を引いたりといった簡単な対策が挙げられる。(国土地理院

対象そのものを変えられなくても、手がかりの側を足せるという考え方です。屋外の測量では、対空標識やポールの設置、白線を引くことが例に挙がっています。

背景も条件になります。先の Adobe のガイドは、回転台の上で対象だけが回って背景が動かない状況では処理が混乱しやすいため、均一な背景で撮ることが重要だとしていました。

枚数は目的で桁が変わる

必要な枚数は、対象の大きさと、どこまで細かく残すかで決まります。幅を示す事例が2つあります。

  • Adobe のガイドは、3Dキャプチャには最低20枚のデータセットを推奨し、撮り方として1周16枚を5周(側面から1周、上側と下側にそれぞれ高さを変えて2周ずつ)を挙げていました

  • 土木研究所の橋梁の検証事例では、1,800枚の写真のSfM処理に15時間を要したと報告されています。コンクリート表層の0.2mm幅のひび割れを抽出することを目標に、写真1画素が対象物の0.5mmに相当する条件(対物画素寸法0.5mm)で撮った場合の数字です

手元の対象を1つ撮るなら数十枚、構造物を細部まで残すなら千枚単位まで開きます。先に決めるのは必要な細かさで、撮影距離と重なりがそこから決まり、枚数は結果として出てきます。

写真からは得られない情報

撮り方や手法を変えても、写真からは出てこないものがあります。中でも寸法の基準は、写真の外から与える必要があります。

寸法の基準。 土木研究所の検証事例は、部材ごとに作った3次元モデルについて、成果物の状態をこう書いています。

なお、部材 3 次元モデルは、位置座標を有しておらず、位置や大きさが確定していない。(土木研究所

生成AI側でも事情は同じです。Intel Labs が公開する MiDaS v3.1 の論文は、1枚の画像からの奥行き推定を本質的に不良設定(ill-posed)な問題と位置づけ、"metric scale ambiguity"(実寸のあいまいさ)を課題に挙げています。相対的な奥行きは求まっても "carry no metric meaning"(実寸としての意味を持たない)で、倍率と、場合によっては原点のずれが未知のまま残るとしています(arXiv:2307.14460)。

実物の大きさは、写真の外から持ち込むしかありません。土木研究所の資料は、大規模橋梁で部分的に3次元モデルを作ったあとに位置座標を与える方法を2つ挙げています。測量機器(トータルステーション、3Dレーザースキャナ等)で計測する方法と、BIM/CIM(建設事業で3次元モデルを活用する取り組み)データを活用する方法です。小さな対象では、長さの分かるスケールを一緒に写しておく方法が同じ役割を果たします。

材質と内部の構造。 表面の見え方は記録されますが、素材の種類、板厚、内部の空洞は写真に写りません。

部材の名前や設計の意図。 出てくるのは形だけで、その形が何を意味するかの情報は含まれません。円筒として復元された形が配管なのか柱なのかは、人が判断して与えます。

用途からの選び分け

先に決めるのは、そのデータで何をするかです。

  • 形を見せたい、共有したい — 複数枚からの復元でも生成AIでも足ります

  • 長さや位置関係を測りたい — 複数枚からの復元を選び、基準になる長さを一緒に写します

  • 設計や加工の元にしたい — 写真だけでは足りません。計測機器で測るか、手作業でモデリングする工程が要ります

  • 見た目を早く用意したい — 生成AIが向きます

判断の分かれ目は、測るかどうかです。見るだけなら手段は広く選べますが、測るなら形の根拠が実測であることと、寸法の基準を別に用意することの両方が要ります。

よくある質問

スマートフォンの写真でもできますか

できます。複数枚から復元する方法は、カメラの種類より撮り方の影響が大きく、重なりを確保して対象の周りを回り込めればスマートフォンでも形になります。

無料でできますか

無料で使えるツールやサービスがあります。ただし出力できる形式、扱えるデータの大きさ、商用利用の可否に制限が付いていることが多いため、使う前に条件を確認してください。

作ったデータを3Dプリントできますか

メッシュとして出力できるため、試すことはできます。ただし撮れなかった面は穴として残るので、印刷の前にビューアで裏側と底面を確認し、穴があれば埋める処理を挟みます。

まとめ

写真の3D化を選ぶときは、次の3点で決まります。

  1. 方法によって形の根拠が違います。複数枚からの復元は実測、生成AIは学習した知識による推定、手作業は作る人の判断です。

  2. 撮り方が結果を決めます。重なり、明るさ、模様のいずれかが崩れると、写真の位置推定の失敗や歪みが起きます。

  3. 寸法の基準は写真の外から与えます。写真測量でも生成AIでも、実物の大きさは写真だけでは確定しません。


3D.Core のサービス紹介資料をダウンロードできます。→ 資料ダウンロード


bestat 編集部について

bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。 https://bestat-data.com/3dcore

参考文献

OTHER

その他の事例

もっとみる

もっとみる