2026.09.08

  • #お役立ちコラム

図面OCRとは|読み取れる情報と読み取れないもの、確認の進め方

図面OCRという言葉は、図面をまるごとデータに変える技術のようにも読めます。実際に取り出せるのは、図面に書かれた文字と数値です。線や円といった形そのものは、別の処理が受け持ちます。

この記事では、図面OCRで何がテキストになり、何がならないのか、どんな図面で読み取りが外れるのか、読み取った結果をどう確かめるのかを順に整理します。製品の比較と料金相場は扱いません。

執筆: bestat 編集部

図面OCRとは

図面OCRは、図面に書かれた文字や数値を、検索や転記にそのまま使えるテキストとして取り出す処理です。OCR(Optical Character Recognition・光学的文字認識)を、表題欄・寸法・注記という図面特有の置かれ方に合わせて行うため、文書を対象にした一般のOCRと呼び分けられています。

対象になるのは、たとえば次のような記載です。

  • 表題欄に書かれた図面番号や図面名

  • 寸法線に添えられた寸法値や公差

  • 部品表の各行にある部品番号、名称、員数

  • 「材質 SS400」のように材質や表面処理を示した注記

読み取りの結果として出てくるのは、文字列と、その文字が図面上のどこにあったかという位置の情報です。これがそろうと、紙やPDFのままでは検索できなかった図面を、番号や材質で探せる形にできます。

一般のOCR・AI-OCRとの違い

一般のOCRは文書の本文を読むために作られていて、図(線画)は文字認識の妨げとして取り除く側に置かれています。図面は紙面の大半が線画なので、この前提のままでは合いません。

国立国会図書館が公開している令和3年度のOCR処理プログラム研究開発作業 報告資料は、デジタル化した図書資料を対象に、こう書いています。

図版、数式、化学式は、本事業の目的である本文検索用テキスト作成においてテキスト認識の阻害要因であり、精度向上のためには文字認識の対象外として排除することが望ましい。

この資料が対象にしたのは図書と雑誌の資料で、図面での性能を示したものではありません。同じ資料は、処理を①見開き分割 ②傾き補正 ③レイアウト認識 ④行認識の積み重ねとして構成しています。文章のかたまりがどこにあるかを決める段階を含む組み立てなので、段組みを持たない図面へはそのまま当てはめられません。

呼び方

主に想定している原稿

図(線画)の扱い

一般のOCR

文書や帳票の本文

認識の妨げとして対象の外に置く

AI-OCR(機械学習で読み取りの幅を広げたOCR)

手書きや様式の揺れる帳票

学習させたデータ次第で扱いが変わる

図面を対象にしたOCR

図面

線に囲まれた文字を拾うことを前提にする

AI-OCRは、学習させるデータを増やすことで、傾いた文字や罫線の中の文字まで対象を広げていく技術です。さらに、画像と文章をまとめて扱える生成AIに図面を渡し、読み取りと項目の整理を一度に行う方式も使われています。読み取った値の意味まで答えさせられる反面、確かめ方が変わるため、この点は後述します。

図面から読み取れる情報

読み取りの対象になるのは、図面に文字や数字として書かれているものです。表題欄の項目、寸法値と公差、部品表の行、材質や表面処理の注記が代表例で、取り出したあとの使い道もそれぞれ決まっています。

図面上の記載

取り出される内容

主な使い道

表題欄

図面番号、図面名、縮尺、作成年月日、会社名

図面台帳の作成、検索用の索引

寸法

寸法値、公差、単位

検査表や部品表への転記

部品表

部品番号、名称、材質、員数

部品表(BOM=部品構成表)の下書き

注記

材質、表面処理、加工指示の文言

見積や工程検討の材料

表題欄からの抽出が成り立つのは、書く位置と項目が決まっているためです。国土交通省のCAD製図基準(令和7年12月)は、一般土木の図面を対象に、表題欄を図面の右下隅にある輪郭線に接して記載することを原則とし、記載事項として工事名・図面名・作成年月日・縮尺・図面番号・会社名・事業者名を挙げています。機械図面の基準ではありませんが、様式が決まっているほど、どこを読めばよいかを指定しやすくなります。

元のPDFに文字がテキストとして入っている場合は、OCRをかけずに取り出せます。CADから直接書き出したPDFでは文字を選択してコピーできることが多く、この場合の作業は画像からの文字認識ではなく抽出です。手元のPDFで文字を選択できるかを先に試すと、OCRが要るかどうかが分かります。

線や形状は読み取れない|CAD変換との違い

OCRは文字を読む処理なので、図面の線や円を形状のデータとして取り出すことはできません。線を線として取り出すのは、ラスタ・ベクタ変換(画像の点の集まりを、線や円などの図形データへ置き換える処理)という別の処理です。

処理

入力

出てくるもの

図面OCR

図面の画像やPDF

文字列と、その文字があった位置

ラスタ・ベクタ変換

図面の画像

線、円、円弧などの図形データ

読み取り結果は「文字と、その文字が図面上のどこにあったか」までです。寸法値の「120」を取り出せても、その120がどの線の長さを指すかまでは決まりません。位置関係から人が結び付けるか、図形側を扱う処理と対応づける作業が要ります。

図面の形状そのものを扱うなら、この別の処理へ進みます。bestatが提供する3D.Core CAD Agentも、AIエージェントが図面を読み取って3Dモデリングを自動化する仕組みで、出てきた形状を人が確認する工程は残ります。2D図面から3Dモデルを作る方式の違いは、CAD AI自動化で何ができるかで整理しています。

読み取りが外れやすい図面の条件

外れやすいのは、文字と線が重なる、文字の向きが揃わない、文字が小さすぎる、原本が傷んでいる、という条件です。多くは読み取り側の設定ではなく、元の図面と元画像の側で決まります。

条件

起きること

先に確かめること

寸法値が寸法線に沿って向きを変える

横書きを前提にした行の切り出しから外れる

1枚の図面に何通りの文字の向きがあるか

文字がハッチングや線と重なる

文字の一部が線と混ざり、別の字になる

密集した部分で字が判別できるか

大判の図面で文字が小さい

画像上で字がつぶれる

元図の文字高さとスキャンの解像度

手書き、青焼き、かすれ、汚れ

字形が学習させた形から離れる

原本の状態と、複写を重ねた回数

記号や略号(φ、R、面取りのC)

似た文字に置き換わる

記号の書き方が図面ごとに揃っているか

文字の大きさは、読み取りの前提を大きく左右します。国土交通省のCAD製図基準は、文字の高さを1.8、2.5、3.5、5、7、10、14、20mmから選ぶことを原則としています。高さ1.8mmの文字は、300dpi(1インチあたり300画素)で取り込むと縦およそ21画素、200dpiなら縦およそ14画素にしかなりません。

寸法値の置き方にも決まりがあります。同じ基準は、寸法の記入方法をJIS Z 8317:1999「製図-寸法記入方法-一般原則、定義、記入方法及び特殊な指示方法」などに準ずると定めています。図面が同じ決まりで書かれているほど数値のある場所を見つけやすく、様式が図面ごとに違えば、その分だけ読み取り側で場合分けが増えます。

読み取った結果をどう確認するか

全項目を目で追うのではなく、項目ごとに確かめ方を変えます。突き合わせる相手がある項目は照合でふるいにかけ、相手が無い項目だけを原本と並べて読みます。

項目

突き合わせる相手

見つかるずれ

図面番号、図面名

既存の図面台帳、ファイル名の一覧

台帳に無い番号、桁数の違い、Oと0・Iと1の取り違え

寸法値、員数

同じ図面内の別の記載、部品表、合計値

単位の取り違え、桁の欠落、公差記号の脱落

材質、表面処理、注記

原本の該当箇所

記号の置き換わり、行そのものの脱落

この順で進めると、原本と見比べる範囲を、照合で差が出た項目と、突き合わせる相手が無い項目だけに絞れます。読み取り結果に確信度(どの程度確かかを示す値)を出せる仕組みなら、低いものから見ていくと、同じ時間で見つかるずれが増えます。

生成AIに整合性の確認をさせる場合は、読み取りと判定を一度にまとめて任せない方が確かめやすくなります。図面上の面積と表の合計が一致するかを指示しても、読み取りそのものが外れていれば、一致という答えも外れるためです。読み取った値をいったん書き出し、それを人か別の計算で照合すれば、どちらの工程でずれたかを切り分けられます。

読み取ったテキストで変わる業務、変わらない業務

変わるのは、図面を探す、転記する、数えるという作業です。変わらないのは、図面の意図を読む判断と、形状そのものを扱う作業です。

変わる作業

変わり方

過去図面の検索

図面番号、図面名、材質で本文検索できる

部品表への転記

表の行を一覧として書き出し、貼り付けられる

数量の拾い出し

数値を集めた一覧を先に作れる

検図の一次確認

図面内の数値と表の値の食い違いを機械的に洗い出せる

テキスト化しても変わらないものが3つあります。公差や注記が何を意図しているかの判断、図面から形状を再現する作業、そして機密の図面をどこへ置くかの決めごとです。いずれも読み取った文字の外側にあります。

図面そのものが手元に無い場合は、現物を測って形状と図面を作る進み方になります。その手順はリバースエンジニアリング 図面の作り方で扱っています。

よくある質問

無料のソフトでも図面OCRはできますか

文字を取り出すだけなら、無料のOCRソフトやPDF編集ソフトの機能でもできます。ただし多くは文書の本文を想定した設計で、傾いた寸法値、線と重なる文字、表の形を保った出力には向きません。手元の数枚で表題欄と寸法値がどこまで拾えるかを試すと、有料の道具が要るかを判断できます。

ChatGPTなどの生成AIに図面を読ませるのとは何が違いますか

画像と文章をまとめて扱える生成AIは、文字を読み取ると同時に、その数値が何を指すかまで答えられます。一方で、同じ画像を渡しても出力が毎回同じとは限らず、読めなかった箇所を空欄にせず、もっともらしい値で埋めることがあります。台帳へ入れる前提なら、項目名と値と位置の組で出力させ、図面台帳や部品表との突き合わせで確かめます。

Pythonで自作できますか

オープンソースのOCRエンジン(Tesseractなど)を呼び出せば自作できます。ただし手間の大半は文字認識そのものではなく、その前後にあります。傾きの補正、読む範囲の指定、記号の置き換え、結果の照合です。まず1つの様式の図面で表題欄だけを対象にすると、どこに時間がかかるかを見積もれます。

図面をクラウドのサービスへ上げてよいかは、どこで判断しますか

確認するのは4点です。図面に含まれる情報の秘密区分、取引先から支給された図面を第三者へ渡せるかという契約上の条件、サービス側のデータの保存場所・学習への利用の有無・削除の条件、そして事業者が第三者認証を受けているかです。bestatはISO/IEC 27001:2022 および JIS Q 27001:2023 を取得しています

まとめ

図面OCRは、図面に書かれた文字と数値をテキストとして取り出す処理で、表題欄の項目、寸法値、部品表の行、注記が主な対象です。線や円といった形状は対象の外にあり、そこはラスタ・ベクタ変換やCAD化という別の処理が受け持ちます。

読み取りが外れる原因の多くは、文字と線の重なり、向きの不揃い、文字の小ささ、原本の傷みという、元の図面と元画像の側にあります。読み取ったあとの確認は、台帳・部品表・原本という突き合わせる相手を項目ごとに決めておくと、目で見る範囲を絞れます。

まず手元の図面を数枚選び、表題欄と寸法値がどこまで拾えるかを見ると、対象にしている図面でどこまで使えるかを判断できます。

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bestat 編集部について

bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画などから3Dデータを生成・処理・活用する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。

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