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図面電子化とは|段階ごとの違いと進め方、スキャン設定の決め方

「図面 電子化」で調べると、スキャン代行のサービス紹介と、進め方の解説が混ざって出てきます。どちらも「電子化」と呼んでいますが、指している範囲が違います。紙をスキャンして画像にするところまでを指す場合と、後から探して使える状態にするところまでを含める場合があります。
この記事では、図面電子化を4つの段階に分けたうえで、どこまで進めるかの決め方、進め方の順序、スキャンの設定、名前と属性の付け方、原本を残すかの判断、電子化した後に残る課題を扱います。図面管理システムの製品比較と、外注費用の相場は扱いません。
執筆: bestat 編集部
図面電子化とは
図面電子化は、紙の図面をデータに変え、決めたルールで保存し、後から探して使える状態にするまでを指します。スキャンして画像にする作業は、その一部です。
「電子化」と「デジタル化」を分けて使う場合もあります。この2語を分けるときは、紙をデータに変える作業が電子化、そのデータを日々の業務で使えるようにすることがデジタル化に当たります。ただし記事や会社によって使い分けは違うため、語をそろえるより先に、どこまでやるかを決めるほうが確実です。
どこまでを含めるかを制度として決めた例が、公共工事の電子納品です。国土交通省の「CAD製図基準」は、対象とするCADデータのフォーマットをSXF(P21)形式(CADソフトをまたいで図面をやり取りするための形式)と定めています。そのうえで、ファイル名の付け方と、図面管理ファイル(DRAWING.XML)に記入する項目まで決めています(国土交通省「CAD製図基準」令和7年12月)。データに変えるところで終わらず、後から探して使うところまでが仕様に入っています。
紙のままだと何が起きるか
紙のままの図面では、探せない、渡せない、失われるの3つが同時に進みます。1つだけが起きることは少なく、対策も別々には打てません。
探せない状態は、保管場所と索引が人の記憶に依存することで起きます。棚の位置、図番の振り方、過去の改訂の経緯を知っている人がいる間は動きますが、その人が異動すると引き当てられなくなります。
渡せない状態は、原本が1部しかないことから来ます。同じ図面を離れた拠点で同時に見ることも、協力会社へその日のうちに送ることもできません。
失われる状態は、紙そのものの劣化と紛失です。青焼き(感光紙に複写した図面)は退色し、折り目は破れます。図面が失われると、その製品や設備の形状の根拠が残らないため、形を取り戻すには現物を測って復元する作業が必要になります(リバースエンジニアリングで図面を復元する手順)。
電子化には段階がある
図面電子化は、画像・PDF、探せる状態、CADデータ、3Dデータの4段階に分かれ、段が上がるごとにできることが増えます。どこまで進めるかは、その図面で何をしたいかで決まります。すべてを最上段まで上げる必要はありません。

第1段の画像・PDFは、スキャナがあれば作れます。保管と閲覧、印刷ができるようになります。この段では、図面に書かれた文字も寸法も画像の模様として入っているだけなので、中身での検索も編集もできません。
第2段の探せる状態は、画像に図番・図面名・改訂・対象設備といった属性を付け、台帳と結んだ状態です。ここで初めて、誰かの記憶に頼らずに目的の1枚を引き当てられます。
第3段のCADデータは、線と寸法を持ったデータです。編集と流用ができます。画像をCADの背景として貼り、その上に必要な線だけを描き足す中間的な形もあります。CAD製図基準にも、SXFの図面ファイルにラスタファイル(TIFやJPG)を添付する仕組みが用意されています。
第4段の3Dデータは、立体として干渉の確認や加工の検討ができる状態です。2D図面から3Dデータを作る手段は複数あり、図面の状態によって向き不向きが分かれます(2D図面をAIで3D化する方法と判断軸)。
図面電子化の進め方
進め方は、対象を絞る、段階を決める、少量で試す、ルールを固める、残りを処理する、の順です。棚にある全量を先にスキャンし始めると、名前も属性も決まらないまま画像だけが増えます。

対象を絞る: 現に参照されている図面から始めます。稼働中の設備、現行製品、改修の予定があるものが先です。対象の枚数と原稿サイズを数え終えたら次へ進みます。
段階を決める: 図面の束ごとに、4段階のどこまで上げるかを1つ決めます。同じ棚の中でも、参照するだけの図面と描き直す図面では到達点が変わります。
少量で試す: 代表的な状態の紙を混ぜて、100枚程度をスキャンします。退色した青焼き、折り目、手書きの修正が入ったものを必ず入れます。元の紙と並べて、最小の文字と細い線が判別できれば設定は妥当です。
ルールを固める: 解像度、カラー、保存形式、ファイル名、属性項目、保存場所、閲覧できる範囲を文書にします。別の担当者が同じ設定で作業できる状態が完了の目安です。
残りを処理する: 自社でスキャンするか代行に出すかを決めて、残量を進めます。受け入れ時に何枚を抜き取り、どう判定するかを先に決めておきます。
自社と代行の分かれ目になるのは、原稿サイズ、枚数、そして図面を社外へ出せるかの3点です。A0やA1の大判は一般的なスキャナでは扱えないため、大判対応機を持っているかが最初の条件になります。枚数が少なく社外へ出せない図面が多いなら自社側、量が多く外へ出せるなら代行側が現実的です。
スキャンで決めること
決めるのは、解像度、カラー、原稿サイズへの対応、保存形式の4つです。いずれも後の用途から決まるもので、スキャナの最高性能に合わせて決めるものではありません。
解像度。図面は線画が中心のため、文字よりも細い線の判読が先に限界へ来ます。国立国会図書館の「資料デジタル化の手引 2017年版」は、保存用画像を原資料に対して300〜400dpiとしています。白黒画像については、解像度に応じて判読できる文字の大きさが定まるとして、次の目安を挙げています(国立国会図書館)。
6ポイント以上、又は線画が含まれる文書の場合: 300dpi
4ポイント以下、又は線画が中心の場合: 400dpi
線が主で細かい文字も入る図面は、後者に当たります。
同じ手引は、300dpiでスキャンした画像を補正して400dpiにすることもできるが、光学解像度400dpiでスキャンした画像より品質が低くなると注記しています。仕様として指定するのは、補間したあとの値ではなく光学解像度です。
法令が下限を定めている場合もあります。国税関係書類のスキャナ保存では、解像度200dpi相当以上での読み取りが要件になっています(国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存」)。用途が変われば必要な値も変わります。
カラー。目安を示しているのが、国立公文書館の「公文書館等におけるデジタルアーカイブ・システムの標準仕様書」です。白黒の文書のデジタル画像化であれば8ビットグレースケール、カラー画像作成の場合は24ビットカラーとすることが適当としています(国立公文書館)。図面では、朱書きの修正、色分けした系統、押印が意味を持つかどうかで判断が分かれます。意味を持つならカラー、線と文字だけならグレースケールで足ります。
原稿サイズ。A0・A1の大判、巻いた状態で保管された図面、折り目のある図面は、そのままフラットベッドスキャナに載せられません。厚みや破損の危険がある原資料には、上から撮影する方式のスキャナが使われます。分割してスキャンし後で合成する方法もありますが、その場合は継ぎ目をまたぐ寸法を実測と照合して、合成のずれを確認します。
保存形式。同じ標準仕様書は、保存用の画像形式としてTIFF(非圧縮)、公開用の画像形式としてJPEGまたはPDFを挙げています。非圧縮のTIFFは容量が大きくなります。国立国会図書館の手引の試算では、A4を400dpi・24ビットフルカラー・圧縮なしでデジタル化した場合に約46MBです。A1の面積はA4の約8倍なので、同じ設定なら1枚あたり数百MBの規模になります。閲覧用に圧縮したPDFを別に作り、原本に相当する画像は保存用として分けて置くほうが扱いやすくなります。
名前と属性を決めないと探せない
ファイル名だけに頼ると、量が増えた時点で探せなくなります。名前は1枚を識別するために使い、絞り込みは名前とは別に持つ属性で行います。
名前の付け方の参考になるのが、CAD製図基準の命名規則です。図面番号3文字、ライフサイクル1文字(測量はS、設計はD、施工はC、維持管理はM)、整理番号1文字、図面種類2文字(平面図はPL)、改訂履歴1文字の順に並べます。その後ろに、人が読む名前をユーザ定義領域として置きます。改訂履歴は0〜9を使い、それ以上の改訂が生じた場合はA〜Y、最終成果はZとすると決めています。
ここから自社のルールへ借りられるのは3点です。
識別子は決まった桁数で先頭に置く
人が読む名前は後ろへ回す
改訂は名前の中の1文字で表す
桁数を固定すると、名前順に並べたときの並びが崩れません。
属性は名前の外に持ちます。CAD製図基準では、図面ファイルとは別に図面管理ファイル(DRAWING.XML)を置き、図面名、図面ファイル名、作成者名、対象工種、基準点情報などを記入します。名前に情報を詰め込む代わりに、検索の入口を別のファイルへ分けている形です。

制度が求める「探せる状態」も同じ考え方に立っています。国税関係書類のスキャナ保存では、取引年月日・取引金額・取引先での検索、日付や金額の範囲を指定した検索、2つ以上の項目を組み合わせた検索ができることが要件です。画像として保存しただけでは、この要件を満たしません。
自社で属性を決めるときは、後から誰かが「これで絞り込みたい」と言いそうな項目を挙げます。たとえば図番、図面名、改訂記号、作成日、対応する製品や設備の名称、図面サイズ、元の紙の所在です。属性は後から足すほど作業が増えるため、最初に決める範囲は広めに取ります。
属性を誰がいつ入れるかも、同じ場で決めます。スキャンの工程の中で入れるのか、後から別の担当者が入れるのかで、必要な工数と、抜けが見つかるまでの時間が変わります。
原本を処分してよいかの判断
紙を処分してよいかは、その図面に保存義務があるか、そして根拠となる法令が電磁的記録での保存を認めているかで決まります。義務の有無は書類の種類ごとに違うため、「図面」という一語では決まりません。
出発点になるのがe-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)です。同法第3条は、他の法令で書面により行わなければならないとされている保存について、書面に代えて電磁的記録の保存を行うことができると定めています。ただし対象は「主務省令で定めるものに限る」とされ、方法も主務省令が定めます(e-Gov法令検索)。紙が一律に電子化できるのではなく、対象と方法は所管する省令が決める形です。
図面が名指しされている例が建設業法です。建設業法施行規則第26条第5項は、保存すべき図書のひとつとして完成図(建設工事の目的物の完成時の状況を表した図)を挙げ、第28条第2項が、その保存期間を目的物の引渡しから10年間としています。同規則第26条第8項は、これらの図書を電磁的記録で保存する場合の条件を定めています。電子計算機に備えられたファイルなどに記録され、必要に応じて営業所で明確に紙面または出力装置の映像面に表示されるときは、その記録をもって図書に代えることができます(e-Gov法令検索)。電子化は認められていますが、「必要に応じて明確に表示できる」ことが条件に付いています。
税務の側では、国税庁がスキャナ保存の対象として、契約書、見積書、注文書、納品書、検収書、請求書、領収書などの国税関係書類を挙げています。設計図面そのものは例示に入っていません。取引の書類に添付された図面の扱いは、その書類の区分に従います。
確認の順序は次のとおりです。
その図面の保存を求めている根拠(法令、発注者との契約、社内規程)を特定する
その根拠が電磁的記録での保存を認めているか、認める場合の要件(解像度、期間、表示、検索)を確認する
義務がない図面でも、紙を廃棄する前に、元の紙と並べた読み取り確認を終える
発注者や取引先から預かった図面には、返却の取り決めが契約に入っていることがあります。要件と契約の判定は、法令を所管する部門と契約を管理する部門が行うため、ここでは確認する項目までを扱います。
電子化した後に残る課題
画像にした後に残るのは、中身で検索できないことと、線として編集できないことの2つです。どちらもスキャンの品質を上げるだけでは解消しません。

検索の側は、属性を付けていない画像がファイル名の一致でしか引き当てられない状態です。表題欄を文字認識(OCR)で読み取り、属性を自動で埋める手段はあります。ただし図面は罫線と寸法線の中に文字が置かれ、縦書きと横書きが混在し、手書きの追記も入ります。読み取り結果をそのまま属性にすると誤った値で絞り込むことになるため、人が確認する範囲を残します。
編集の側は、画像が線の情報を持っていないことから来ます。CADで使うには、線に変換するか描き直す作業が要ります。立体で干渉や加工を検討するなら、さらに3D化の工程が加わります。
bestatは、2D図面から3Dデータを自動生成する3D.Core for CADを提供しており、最短1営業日で納品します(プレスリリース 2025年9月29日)。3D.Core CAD Agentでは、AIエージェントが図面を読み取り、3Dモデリングを自動化します(note「Monthly bestat 3月号」)。読み取った寸法と生成された形状が元の図面と合っているかを確かめる工程は、人の側に残ります。
紙をスキャンして画像にする工程そのものは、スキャン代行や出力サービスが担う領域で、bestatは提供していません。第1段と第2段は自社のスキャナかスキャン代行が担う範囲で、bestatが扱うのは第3段より先です。図面を社外へ預ける場合は、預け先で情報がどう扱われるかを先に確認します。bestatはISO/IEC 27001:2022およびJIS Q 27001:2023を取得しています。
過去の2D図面をどこまで3Dデータにできるかを個別に確認したい場合は、製品ページの窓口から相談できます。→ 3D.Core CAD Agent へ問い合わせる
よくある質問
図面の電子化の費用はどのくらいかかりますか
枚数だけでは決まりません。原稿サイズ、紙の状態、必要な解像度とカラー、属性入力の有無、納品形式の5つで金額が動きます。見積を比べるときは、この5つを同じ条件にそろえてから並べます。属性入力は1枚ごとに人が値を入れる作業なので、スキャンの単価とは分けて確認します。
電子化した図面から3Dデータを作れますか
作れます。ただし画像のままでは寸法を読み取れないため、寸法と投影法が判読できることが前提になります。三面図がそろっているか、寸法が欠けていないか、尺度が書かれているかを先に確認します。判読できない図面は、3D化の前に描き直すか、現物を測る方法へ切り替えます。
古くて汚れた図面や手書きの図面も電子化できますか
画像にすることはできます。判読できるかどうかは別で、青焼きの退色、折り目の影、裏写りが読み取りを妨げます。グレースケールで階調を取り、コントラストを調整すると改善する場合があります。文字認識の精度は落ちるため、属性は人が入力する前提で計画します。
まとめ
図面電子化は4段階に分かれる。画像・PDFで止めるか、探せる状態まで上げるか、CADや3Dまで進めるかで、かかる費用と工数が変わる
スキャンの設定は用途から決める。線画が中心の資料では400dpiが公的な手引の目安で、カラーは朱書きや色分けが意味を持つかで分かれる
紙を処分してよいかは、その図面の保存を求めている根拠と、それが電磁的記録での保存を認めているかで決まる
3D.Core のサービス紹介資料をダウンロードできます。→ 資料ダウンロード
bestat 編集部について
bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。https://bestat-data.com/3dcore
参考文献
国土交通省「CAD製図基準」(令和7年12月): https://www.cals-ed.go.jp/mg/wp-content/uploads/cad8.pdf
国土交通省「電子納品に関する要領・基準」: https://www.cals-ed.go.jp/cri_point/
国立国会図書館「国立国会図書館資料デジタル化の手引 2017年版」: https://www.ndl.go.jp/jp/preservation/digitization/guide.html
国立公文書館「公文書館等におけるデジタルアーカイブ・システムの標準仕様書」(平成30年3月改訂): https://www.archives.go.jp/about/report/pdf/da_180330.pdf
e-Gov法令検索「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」: https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000149
e-Gov法令検索「建設業法施行規則」: https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50004000014
国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存【令和6年1月以降用】」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_03.pdf
bestat プレスリリース(2025年9月29日): https://bestat-data.com/newslist/detail/pr_20250929_ja
bestat note「Monthly bestat 3月号」: https://note.com/bestat/n/nb03beac7e279

