2026.09.29

  • #3D.Core

現場データを資産に変える、知的財産経営という哲学

現場の実務にも、経営哲学にもフィットした、「ちょうどいい」3D.Core

Key View:データを「資産」に変える

プレス機械のメンテナンスという専門領域に向き合い続けてきた、しのはらプレスサービス。その現場では、図面のないメンテナンス対象の機材や現場をいかに正確に記録するかが、長年の課題でした。高精度なスキャナーは精度こそ高いものの、専門性や準備の手間が「誰もが使える」ものにはなり得ず、手作業には測定者ごとの属人性が残っていました。その間を埋める「ちょうどいいツール」を、同社は長く探し続けていました。

現在、同社はPoCを終えて本格導入がスタートしたばかりですが、そこには単なる業務効率化にとどまらない、同社が長年大切にしてきた経営哲学と重なり合う手応えが見え始めています。

企業紹介 

しのはらプレスサービス株式会社は、プレス機械のメンテナンス・保全を専門とするエンジニアリング企業です。様々なメーカーのプレス機械に対応し、これまでに手がけてきた機種は5,000を超えます。この「メーカーに拘らず数多く見てきた」という経験こそが、同社ならではの強みです。個々のメーカーでは自社製品しか見えないため気づくことが難しいような、 「複数のメーカーの機械で、同じ箇所が同じように壊れる」といった構造的な弱点を、横断的な視点から捉えることができます。

同社の前身はプレス機器メーカーでしたが、1970年代の初め、いち早く「労働集約型のものづくりだけでは、いずれ厳しくなっていく」と考え、メンテナンスを通じて知見を蓄積し続ける「知識集約型産業」へと事業を転換しました。以来、機種ごとの構造や不具合の情報、そのメンテナンス内容などを全て蓄積しており、部品の交換にとどまらず、素材や構造そのものを見直す改善提案や、新しい駆動システム・搬送装置を組み込んで再生させる「リビルド・レトロフィット」という独自事業にもつながっています。1台のメンテナンスにとどまらず、業務全体の効率化やお客様の事業価値そのものの向上につなげていく。そこに、同社の大きな強みがあります。

こうした「メンテナンスの付加価値」を理解し、評価する顧客には、自動車業界の大手完成車メーカーやその一次・二次サプライヤーなど、生産性や品質に対する意識の高い大手企業が名を連ねます。事後対応ではなく予防保全(プリベンティブ・メンテナンス)という考え方を軸に、国内全国の拠点に加え、北米にも拠点を構え、事業を展開しています。

今回お話を伺った方

しのはらプレスサービス株式会社
代表取締役社長 篠原 正幸様 (写真右)
設計開発本部 機械設計部 谷田川 篤嗣様(写真左)


導入の背景 :「ちょうどいいツール」が無かった

――3D.Core導入前、現場ではどのような課題がありましたか?

篠原様:弊社ではすでにレーザースキャナーを導入し、運用してきました。1メートルの範囲で0.006ミリ程度の誤差という、いわゆるハイエンドの精度を持つ設備です。

ただ、それだけの精度を出すには準備に時間がかかり、機材も多く、専門性も求められるため、扱える人員はどうしても限られてしまいます。一方で、そこまでの精度を必要としない仕事も数多くあります。「使いたいけれど、この作業のためにその準備時間は見合わない」ということもありました。

かといって手作業に戻れば、測定者ごとの属人性の問題が残ります。例えば、同じ機械をスケッチしても、Aさんが測った箇所とBさんが測った箇所は微妙に違います。「ここは測らなくていい」とその場で判断してしまえば、後から見返した時にはもうその情報は残っていません。高精度なスキャナーと、そうした手作業の、ちょうど間くらいのものがないか、ずっとそう感じていましたし、そういうものはいつか必ず出てくると考えていました。

弊社は、プレス機械の点検業として比較的早い時期から取り組んできました。プレス機械には現在、年1回の自主検査が法令で義務付けられていますが、実は弊社がこの分野の点検に取り組み始めたのは、それが義務化されるより前から点検・メンテナンスの重要性を顧客に伝えてその実施を推進してきました。
今では、厚生労働省に登録されている点検台数(約16万台)のうち、およそ1割にあたる1万6千台を弊社が担っています。義務化される前の紙で残していた記録を、少しずつデジタルに置き換えてきた延長線上に、今回の取り組みもあります。だからこそ、「記録の質」だけでなく「記録のしやすさ」や「活用のしやすさ」を気にかけてきたのだと思います。

導入の決め手: 大掛かりな機材から、スマホ1台へ

――3D.Coreを選んだ決め手は?

篠原様:新しいiPhoneにLiDAR機能が搭載され、空間上の距離が測れるようになった時、「これだ」と思いました。以前から「そのうち、こういう機能が出てくるはずだ」とずっと考えていて、ちょうどそこにはまるものが出てきた、という感覚でした。ただ、LiDARそのままの精度では、正直なところ実務で求められる水準には届きません。そこにAIが組み合わさることで精度を補っていくというのを聞いたときに、まさにこれだ、という感覚でした。

谷田川様:新聞に掲載された記事で3D.Coreのことを知り、社内で検討・提案しました。本来のLiDAR機能だけでは誤差が大きすぎますし、既存の高精度スキャナーや、手軽さを売りにした他社製品を使っても、持ち運びや設置に時間と手間がかかってしまいます。ちょうどいい塩梅の製品はなかなかなかったので、これは試してみる価値があると感じました。

篠原様:弊社は全国、そして北米にも拠点を持ち、各拠点の営業や技術者が現場に足を運んでいます。これまでは3Dスキャンをしようとすると、大きなスキャナーを新幹線や車に積んで運ぶ必要がありました。機材を持ち運ばなければならないこと自体が、一つの負担だったんです。加えて、それを扱うには専門的な知識や技術を持った人員が必要で、「誰でも持って行って、誰でも使える」ものではありませんでした。

谷田川様:それが、スマホ1台で完結するようになったことで、状況は大きく変わりました。事前に機材を準備していなくても、現地でその場で撮影し、その場で3Dデータ化でき、本部の担当者ともお客様ともデータを共有できるようになりました。

実際にPoCで利用して比較してみると、既存の3Dスキャナーでは6時間かかっていた作業が、0.5時間まで短縮されました。手作業での測定と比べても、同等以上の時間短縮が見込めると考えています。また、重い機材や専門人材を手配しなくても、現場にいった担当者がすぐに撮影することができますし、重い荷物も運ぶ必要がなくなりました。何より、3Dで撮影してしまえば、後から「あそこを測り忘れた」ということ自体が起きません。測る前にどこを測るか判断する必要すらなく、まずは丸ごと記録できてしまう。この、測り漏れや個人差そのものを考えなくてよくなるという点が、二度手間をなくす以上に大きな意味を持つと感じています。

篠原様:「新しいことは、新しい人にやってもらう方がいい。」それが私の考え方です。今の技術に親しんでいるのは、やはり若い世代です。ベテランが慣れたやり方を続けるのは自然なことですが、新しい技術は新しい世代に託し、その人たちがやがてベテランになった時、また次の世代に託していく。そうやって会社を回してきましたし、今回の3D.Coreも、その流れの一つだったと捉えています。

活用を通じて見え始めた変化:手軽さが、データを「集まる」ものに変える

――実際に使ってみて、どのような変化を感じていますか?

谷田川様:一番大きいのは、大掛かりな機材を担いで持ち歩く必要がなくなったことです。スマホ1台あれば撮影できるという、物理的なハードルが下がったことの意味は、想像していた以上に大きいと感じています。特に、全国・海外の拠点それぞれで「準備していなかったから今日は撮れない」ということがなくなったのは大きいですね。現地に行って、必要だと感じたその場でさっと撮って、その日や次の日には3Dデータで関係者と共有しながら会話できる。これまでは、専門の機材と人間を手配してから、という一手間がありましたが、今はその場の判断で動けるようになりました。

篠原様:これまでは、高精度なデータを撮ろうとすればするほど、扱える人も、使える場面も限られていきました。手軽に撮れるようになったこと自体も大きいのですが、本当に大事なのは、そうやってたくさんのデータが積み上がっていくことなんだと思います。1点の完璧なデータを時間をかけて作るよりも、みんなが撮れる状態にして、それが積み重なっていく。その先に、初めてナレッジとして活きてくる。

スケッチだと、測る人によって「どこを測るか」の判断が変わってしまいます。「ここはどのくらいのサイズか」「ここは測っておくべきか」と、その場で頭を使って判断しなければならない。でも3Dなら、そういうことを一切考えずに、とにかく全部撮ってしまえばいい。撮りさえすれば、あとから必要な寸法も、測り漏れも、全部データとしてついてくる。設計を見る人にも、現場で作業する人にも、それぞれの見方でそのデータを見てもらえる。誰かが判断して切り捨ててしまう前に、まずは全部記録しておける。こういう時代がいつか必ず来るだろうと、ずっと思っていました。技術がようやく、自分たちが考えていた理想に追いついてきた、という感覚に近いですね。

今後の展望:知的財産経営の先にある、情報の「資産化」

――今後、3D活用をどのように拡げていきたいとお考えですか?

篠原様:弊社は昔から、「ヒト・モノ・カネ」に加えて「情報」を軸に経営するということを大切にしてきました。今でこそよく言われる考え方ですが、弊社が紙で図面を管理していた時代から、情報そのものを会社の財産としてとらえる、いわば「知的財産経営」という発想を持っていたんです。

だからこそ、属人的な仕事のやり方を変えたいとずっと考えてきました。Aさんが知っていることをBさんが知らない、では困る。みんなが同じように仕事ができる環境を作る。それが、弊社が大事にしてきた考え方です。

3D.Coreは、まさにその延長線上にあるサービスだと感じています。誰かが測って終わり、ではなく、誰もが手軽に記録し、誰もがそのデータを見られる。それが積み重なっていくことで、これまで一部の人間しか扱えなかった情報が、組織全体の資産になっていく。

弊社には、これまで蓄積してきた2D図面が10万枚近くあります。今後、こうした過去の資産と、3D.Coreのような新しい技術をどうつなげていけるかも、一つの関心事です。過去のものを無理に作り変える必要はないと思っていますが、これから生まれるデータについては、できる限り多くの人が使える形にしていきたい。

谷田川様:PoCで十分な効果が見込めることが確認できたので、すでに実際の現場で本格導入が始まっています。今後は、さらに活用の幅を拡げるべく、今回のような点検・メンテナンスの現場での活用だけでなく、他にどんな場面で活用できるか、実際に手を動かしながら探っていきたいと思っています。

篠原様:点で終わる付き合いではなく、線でお付き合いしていきたいと思っています。弊社が持つプレス機械のナレッジと、御社の3Dの技術を掛け合わせることで、まだ見えていない使い道も一緒に見つけていけたらと、楽しみにしています。


編集後記|現場が見ていた未来に、技術が追いついてきた

しのはらプレスサービス様のお話をお伺いする中で、その先見の明に驚かされるばかりでした。現場で長年メンテナンスに向き合ってこられた企業が、さらに先を見据えて技術の未来を語られているということにとても感動しました。

また、顧客のプレス機器を「リビルド&レトロフィット」させていくという考え方は、今までのやり方を大切にしながら新しいものを取り込み変革していく、という篠原様の経営哲学にも繋がるものだと感じました。それを何十年も前から実践されてきたからこそ、大掛かりな機材からスマホ1台へという変化の意味を、誰よりも深く理解してくださっていたのだと感じています。

取材の中で特に印象に残ったのは、篠原様の「こういう時代がいつか必ず来ると思っていた」という言葉でした。技術の進化を待っていたのではなく、目指す姿を先に描き、そこに技術が追いついてきたという順序で物事を捉えていらっしゃるのだと感じました。
また、その構想を現場で実際に形にしていくのは、谷田川様をはじめとする若い世代の方々です。新しいことは新しい人に託す、というしのはらプレスサービス様の姿勢が、今回の取り組みにもそのまま表れていました。

bestatにとっても、3D.Coreは精緻な1点のデータを作るためだけのツールではなく、現場の一人ひとりが気軽に手に取り、データを積み重ねていくためのサービスでありたいと考えています。これから、しのはらプレスサービス様が長年培ってきたナレッジと、私たちの技術が交わっていく先に何が生まれるのか。その歩みにご一緒させていただけることを、心から嬉しく、そして光栄に思っています。

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導入事例詳細

企業名

しのはらプレスサービス株式会社

ご担当部署

設計開発本部 機械設計部

成果

1. 既存の3Dスキャナーでは約6時間かかっていた作業が、3D.Coreの活用で約0.5時間まで短縮
2. 大掛かりな機材や専門人材を必要とせず、スマホ1台で現場撮影からデータ化まで完結
3. 測る前に測定箇所を判断する必要がなくなり、測り漏れや測定者ごとの属人性の問題を解消
4. 全国・海外拠点のどこでも「準備していないから撮れない」がなくなり、必要な場で即座にデータ化・共有が可能に

業種

プレス機器メンテナンス

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