2026.09.01

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SLAMとは|仕組みと種類、測量で点群を取るときの精度の限界

SLAM(スラム)は、自分がどこにいるかの推定と、周囲の地図づくりを同時に進める技術です。手に持って歩くだけで点群(測った点の座標の集まり)が取れる3Dスキャナも、この技術で位置を決めています。

この記事では、SLAMの仕組みと種類、歩きながら点群が取れる理由、誤差が累積する条件、据置型スキャナとの使い分け、公共測量での扱いを、一次資料の記述に沿って整理します。

執筆: bestat 編集部

SLAMとは

SLAMは、自己位置推定(自分がどこにいるかの推定)と地図作成を同時に行う技術です。移動しながらこの計算を繰り返して移動軌跡を推定し、その軌跡に沿った3次元または2次元の地図が作られます。

日本建設機械施工協会の機関誌『建設機械施工』Vol.73 No.12(2021年12月)に掲載された報告「SLAMを用いた3次元測量」は、この技術を次のように説明しています(PDF)。

SLAM とは Simultaneous Localization And Mapping の略称であり,自己位置推定(localization)と地図作成(mapping)を同時に(simultaneous)行う技術である。つまり,地図を作るためには自己位置推定が必要であり,自己位置推定をするためには地図が必要である。

地図と自己位置は互いに前提になっているため、どちらかを先に確定できません。SLAMは2つを同じ計算の中で解くことで、この循環を成立させています。

国土地理院は、GNSS(GPSなどの衛星測位)を利用することなく移動経路の位置情報が得られる技術だと説明しています(LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル)。屋内や地下空間でも位置が分かるのは、外から位置を受け取らず、周囲の形から計算しているためです。

SLAMはどこで使われているか

掃除ロボットが部屋の間取りを作るとき、工場の無人搬送車が自律走行するとき、手に持って歩く3Dスキャナが点群を作るときに、いずれもこの技術で位置が決まっています。

MathWorksの解説ページは、SLAMの応用例を分野ごとに挙げています(SLAMとは?)。お掃除ロボットの間取り生成、芝刈りロボットの自動運転、工場内AGV(無人搬送車)の自律運転に加えて、自動運転車のHD Map作成、ドローンによる荷物配達、災害現場の状況把握が並びます。

測量では、国土地理院が屋内や地下空間のインドアマッピングに加えて、屋外の測量でも活用できる可能性があると書いています。『建設機械施工』の報告によれば、LiDAR SLAMのシステムは小型・軽量のものが多く、ハンドヘルド(手持ち型)、UAV(無人航空機)、電動バギーなど複数のプラットフォームへ取り付けて使えるものもあります。

用途は分かれていますが、共通しているのは移動しながら位置を決めている点です。衛星測位が届かない屋内や地下でも、止まって位置を測り直さずに進めます。

SLAMの種類

周囲の形を測るセンサーの種類で分かれ、レーザーを使うLiDAR SLAMと、カメラを使うVisual SLAMが中心です。単独で使うほか、複数を組み合わせて目的に応じたシステムが作られます。

『建設機械施工』の報告には、センサの一般的な仕様が次のようにまとめられています。特定の製品の仕様ではなく、2021年時点の一般的な仕様として示された表です。

センサー

方式

最大計測距離

水平視野

照明条件

レーザースキャナー

LiDAR SLAM

5〜200 m

120〜360°

暗所・屋外可

単眼カメラ

Visual SLAM

センサー単体では得られない

60〜180°

暗所不可

ステレオカメラ

Visual SLAM

5〜30 m

60〜90°

暗所不可

距離画像カメラ

Visual SLAM

1〜5 m

60〜90°

屋外不可

LiDAR SLAM

レーザースキャナーで物体までの距離と方向を測り、SLAMを実行する方式です。広範囲を測れて、暗闇でもデータを取得できます。

欠点として、報告はLiDARが高価であること、物体の少ない環境ではSLAMが成立しないことを挙げています。測量機器として多く使われているのはこの方式で、国土地理院のマニュアルもレーザ主体のものをLidarSLAMと呼び、対象にしています。

Visual SLAM

カメラで撮影した画像からSLAMを実行する方式です。カメラは分解能が高く色による識別ができますが、暗闇などでは使用できず、耐環境性能では劣ります。

カメラは3種類に分かれます。単眼カメラは1台しか持たないため、センサー自体では距離を得られません。カメラを移動させて複数の視点から三角測量で距離を算出し、その処理自体がSLAMの一部になります。

ステレオカメラは2台のカメラを持ち、静止したまま2枚の画像から距離を計算できます。距離画像カメラは赤外線などを発光して距離を画像として測るため、距離と方向を直接得られます。MathWorksは手法をVisual SLAM、Lidar SLAM、RGB-D SLAM、ランドマークSLAMの4つに分けており、距離画像カメラを使う方式はRGB-D SLAMに当たります。

特徴点とは何か

特徴点は、周囲の形の中で他と区別できる手がかりです。SLAMはこの手がかりの見え方の変化から、自分がどれだけ動いたかを計算します。

国土地理院のマニュアルは、LidarSLAMの動きを次の順序で整理しています。移動しながら周辺の地形や地物の特徴点を見つけ出し、それらの見え方や測定距離の変化を把握しながら、自らの移動量と角度から移動軌跡を推定する、という説明です。何を手がかりにするかはセンサーで変わり、報告の表ではレーザースキャナーが反射強度、カメラが輝度・色を特徴量として挙げられています。

したがって、SLAMの精度は周囲に区別できる形があるかどうかに左右されます。特徴のある外部形状を連続して計測できれば累積誤差を抑えられますが、手がかりが乏しい場所では自己位置推定の誤差が増えます。

歩きながら点群が取れる理由

移動軌跡を推定し、その軌跡に沿って測った点を並べるためです。機器を三脚へ据えて原点を測り直す工程が要らないため、歩いた範囲をそのまま覆えます。

出力されるのは点群です。三脚に据えて使う据置型の3Dスキャナーが出すものと、データの種類そのものは変わりません。

▶ 関連記事: 点群データとは|点が持つ情報の中身と、3Dモデル・CADとの違い

移動計測の速さは、報告が示した1件の事例から読み取れます。豪雨災害現場の現況測量で、延長約370 mの計測が30分程度で完了しました。同規模の作業を従来の平面縦横断測量で行うと3〜4日程度を要します。

ただし内業(計測後のデータ処理)は増えます。報告は、SLAM計測データの処理が必要になるため内業は従来法より時間を要し、全工程では3割程度の短縮になったと書いています。現場での作業時間が縮んでも、総工数が同じ比率で縮むわけではありません。

この事例では、UAVを用いた空中写真測量や地上型レーザースキャナーでは不向きなブロック積背面の陥没状況も取得できたとされています。狭くて入り組んだ場所へ持ち込めることが、移動型の利点です。

自分の動きや傾きを検知する内界センサ(IMU=慣性計測装置など)も精度に効きます。報告の検証では、特徴点が多い地点では内界センサの有無で差が出ませんでしたが、精度が劣るグラウンドでは併用によって精度が3割程度向上しました。同じ経路で取得した1回分のデータを、内界センサの有無で処理し直した比較です。

誤差が累積する条件

誤差は、計測誤差を持つ外部形状から自己位置を推定するために積み上がります。周囲に手がかりの少ない場所と、経路が長く計測時間が伸びる場合に大きくなります。

経路長と計測時間の影響は、国土地理院が数字で示しています。マニュアルの解説によれば、国土地理院は複数の機器で検証を行っています。計測時間が5分を超えると要求精度0.05 m(RMS誤差)を満たすことが難しく、10分を超えると0.1 mを満たすことが難しいという結果です。RMS誤差は誤差の二乗平均平方根で、ばらつきをまとめて表す値です。

マニュアルは、あらかじめ実施した精度・性能試験での経路長と計測時間を超えないことを標準としています。1回の計測で覆える範囲には、機器ごとの上限があると読み取れます。

起終点を合わせる(閉ループ)

報告は、SLAMで計測する場合は起終点を同じ場所とした移動軌跡が望ましいとしています。起点と終点で共通する外部形状を判読し、合わせ込みを行うことで、累積した誤差を解消します。そのため計測の起終点は、周囲に特徴のある場所を選んだ方が良い結果が得られます。

国土地理院のマニュアルも、計測開始位置と終了位置を同位置にすることを標準とし、これをループ閉じ込みと呼んでいます。機器によっては8の字状に計測するなど、同一箇所を複数回経由することでも同様の効果が期待できるとしています

ただし同じ場所を何度も通ると、点群にずれが生じる懸念もマニュアルは挙げています。計測範囲を重複させて点密度を高める場合も同じで、一様な点密度で範囲を網羅することは難しくなります。

成立しにくい5つの環境

報告は、特徴点が捉えにくく、自己位置推定の異常値または誤差の増加が生じやすい計測環境を5つ挙げています。

  • グラウンドなど広く平坦な場所(Z軸方向の特徴点がない)

  • 直線の廊下やトンネル(移動しても外部形状に変化がない)

  • 模様のない壁(特徴点が捉えられない)

  • 密集した竹藪(似た特徴点が多くなり誤認識する)

  • 人混み(固定された特徴点がなく自己位置推定の誤差が大きくなる)

対処として、屋内であれば机や椅子、屋外では車などを配置して特徴点を捉えやすくする工夫が挙げられています。国土地理院のマニュアルも経路周辺の環境に触れ、市街地では車両の走行や歩行者が少ないこと、森林では草木の風による揺れが少ないことに留意するとしています。周囲が動いている場所では、固定された手がかりが得られないためです。

形が伸びるという壊れ方

自己位置推定が正しく処理されないと、計測対象物の形状が大きく変形します。厄介なのは、画面で全体を見ただけでは気づきにくいことです。

報告はグラウンドでの計測結果について、一見すると特に問題がないように見えるが、細部を確認するとサッカーゴールが伸びているのが分かる、と書いています。寸法が分かっている物と照合しないと判定できない壊れ方です。

報告の検証では、特徴点が豊富な区間では較差が収束しましたが、乏しい区間では収束せず、計測ごとに異なる傾向を示してデータが安定しませんでした。結論として、グラウンドや広い河川敷のような平坦な地形はSLAMの使用には不向きであり、そのような環境で使う場合は対策が必要だとしています。

取れた点群は業務の座標に載っていない

SLAMの出力は、起点を原点とした任意の座標系です。現場や図面の座標で使うには、標定点を用いた座標変換の作業が別に要ります。

報告は、建設現場で使用する場合は標定点を用いた現場座標系への変換作業が必要になると書いており、標定点にはターゲットボードやスフィア(基準球)が使えるとしています。座標が分かっている点を現場に置き、点群の中でその位置を特定して変換の基準にする、という流れです。

国土地理院のマニュアルは、標定点を1回の計測範囲を囲むように4点以上設置することを標準としています。検証点(変換後の精度を評価するための点)は標定点とは別に、標定点の数の半分以上を設置し、精度の低下が懸念される箇所に置きます。GNSS観測で点群座標を計測する場合は、標定点の設置を省略できるとしています。

つまり、歩いて計測する前に、標定点を設置して座標を測る作業が先に必要です。SLAMで短くなるのは計測そのものの時間で、前後の作業がなくなるわけではありません。

据置型スキャナとの使い分け

判断は、覆う範囲の広さと据え直しの回数で決まります。据置型は1点から測れる範囲が決まっているため広い現場では据え直しが増え、移動型は歩いた範囲を続けて覆える代わりに、誤差が経路長と計測時間で積み上がります。

範囲が広い場所や、入り組んで三脚を据えられない場所は移動型が向きます。逆に、寸法の根拠にする箇所や要求精度が厳しい箇所は、据置型で押さえる方が確実です。国土地理院は手持ち型や装着型のレーザスキャナについて、歩行しながら計測できる特性を活かして、比較的狭い範囲を対象とした測量での利用が期待されると書いています。移動型は、広範囲を無制限に覆える手段ではありません。

手段を1つに決める必要はありません。bestatが稼働中の工場で行った実証では、工場全体をFARO製3Dスキャナーで計測し、一部の設備はスマートフォンで撮影して、両方を併用しました(note)。この実証はSLAM機器を使ったものではありませんが、1つの現場で範囲ごとに取得手段を分けた例です。

機種ごとの仕様より先に決まるのは、必要な精度の桁と、機器を据えられる位置と経路です。寸法の根拠に使うのか、現況を把握するだけなのかで、選ぶ側の手段が変わります。

公共測量で使うときの枠組み

国土地理院が「LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル」を定めています。作業規程の準則(平成20年 国土交通省告示第413号)第17条第3項に基づく、新しい測量技術による測量方法に関するマニュアルの一つです。

マニュアルは2022年6月に制定され、2026年3月に一部改正されています。対象は、測量者が機器を持つまたは背負うなどして、歩行しながら断面または全周囲を測量するLidarSLAM機器です。

位置づけは、準則に基づかない特例的な作業方法を公共測量で行う際に使うものです。マニュアルに基づいて公共測量を行う場合、測量作業機関(実施する側)は使用する機器が求められた性能を持つことを測量計画機関(発注する側)へ示し、計画機関はその作業方法で公共測量を行って良いかを判断します。

マニュアルは、利用目的ごとの要求精度の目安となる標準値も示しています。準則と出来形管理要領(案)に基づく値です。

利用目的

要求精度の標準値

グラウンドデータ・グリッドデータ・等高線データの作成

標高0.1 m(RMS誤差)。水平位置は規定しない

数値地形図作成(レベル500)

水平位置0.15 m・標高0.2 m(許容範囲)

数値地形図作成(レベル1000)

水平位置0.3 m・標高0.3 m(許容範囲)

出来形計測

XYZの各成分で±0.05 m以内(許容範囲)

起工測量

XYZの各成分で±0.1 m以内(許容範囲)

レベルは、数値地形図データの位置精度の区分です。この表はSLAMの性能ではなく、成果品に求める精度の目安を示したものです。マニュアルは、現状の技術からすると較差の最大値が±2 cm以内といった過度な要求精度の設定は非現実的だと書いています。

枠組みは短期間で変わりました。2021年の報告は、当時SLAMを用いた3次元測量の関連要領は屋内3次元地図作成のマニュアル(案)のみで、公共測量作業規定には該当しない方法だと書いています。2022年6月の制定によって、公共測量で使うための手順が定められたことになります。

このマニュアルは公共測量の枠組みで、民間の工場やプラントの計測に義務として適用されるものではありません。ただし、標定点と検証点で精度を確認し、点検測量で較差を確かめるという手順は、発注側と作業側で精度の合意を作るときの参考になります。

よくある質問

SLAMとLiDARは何が違いますか

SLAMは自己位置推定と地図作成を同時に行う計算手法で、LiDARはレーザーで距離と方向を測るセンサーです。国土地理院のマニュアルは、周囲を測るセンサーにレーザ等が用いられ、レーザ主体のものをLidarSLAMと呼ぶとしています。LiDARはSLAM専用の部品ではなく、三脚へ据える地上型スキャナーやUAVに載せるスキャナーにも使われます。

Visual SLAMとフォトグラメトリは何が違いますか

どちらも画像から形を求めますが、位置を決める順序が違います。Visual SLAMは移動しながら自己位置推定と地図作成を同時に進め、フォトグラメトリは撮影した複数の写真から後で形を復元します。報告によれば、単眼カメラのSLAMもカメラを移動させて複数の視点から三角測量で距離を算出するため、計算の一部は共通します。

SLAMの精度はどう管理・評価するのですか

公共測量では、標定点の残差と検証点との較差で確認し、さらに点検測量を行います。国土地理院のマニュアルは点検測量について、オリジナルデータ(計測して作成した元の点群)上で特定できる二点間の距離を、別途計測した斜距離と比べ、較差が要求精度を満たすことを確認するとしています。点検する地物または標識に、標定点と検証点を用いてはならないとも定めています。機器側では、測量作業前6か月以内に精度・性能試験を行うことを標準とし、試験で確認した精度を上回る要求仕様の測量は原則として実施できないとしています。

まとめ

  1. SLAMは自己位置推定と地図作成を同時に行う技術です。 外から位置を受け取らず周囲の形から計算するため、GNSSが届かない屋内や地下でも、移動しながら測れます。

  2. 誤差は測った形から位置を推定するために積み上がります。 平坦な場所、変化のない通路、模様のない壁、動くものが多い場所で大きくなり、全体を眺めただけでは気づけない形の伸びとして現れます。

  3. 出力は任意の座標系です。 業務の座標で使うには標定点を使った変換が別に要り、公共測量では国土地理院のマニュアルが手順を定めています。


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bestat 編集部について

bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。 https://bestat-data.com/3dcore

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