2026.09.02

  • #お役立ちコラム

MMSとは|構成機器と仕組み、得られるデータを解説

MMSとは、車両などで移動しながら、道路や周辺の建物・設備を3次元で記録する計測システムです。

構成機器、仕組み、得られるデータ、用途、ほかの3次元計測との違いを説明します。

執筆: bestat 編集部


MMSとは

MMSはMobile Mapping System(モービルマッピングシステム)の略です。GNSS、IMU、レーザースキャナ、カメラなどを車両へ搭載し、移動しながら周囲の形と位置を取得します。

国土交通省の道路データプラットフォーム「xROAD」は、MMSを「走行しながら3次元の道路の形状・データを高精度で効率的に取得するシステム」と説明しています(MMSによる三次元点群データ等)。

身近な成果としては、道路と沿道の3次元点群、道路標識や電柱が写った画像、これらを基に作る道路台帳の図面があります。河川の堤防天端を走れる車両へ搭載し、連続した形状を把握する使い方も検討されてきました。

MMSを構成する機器

MMSは、周囲を測るセンサーと、車両の位置・姿勢を測るセンサーから成ります。さらに、時刻をそろえた観測データを処理する解析ソフトウェアが必要です。

MMS車両に搭載されるレーザー、GNSS、カメラ、IMU、走行距離計の配置

レーザースキャナ

レーザーを照射し、戻るまでの時間などから対象までの距離を測ります。車両が進みながら道路面、標識、建物の外形などを走査し、点の集まりとして記録します。

カメラ

道路と沿道を連続的に撮影します。写真は対象物の色や文字、表面の状態を読み取る手がかりになり、点群と重ねて使うこともできます。

GNSS

衛星からの信号を利用して、車両が地球上のどこにいるかを測ります。位置付きの点群を作る基準になる装置です。

IMU

IMU(慣性計測装置)は、車両の加速度や回転を測り、向きや傾きの変化を捉えます。坂道、カーブ、車体の揺れがあっても、レーザーやカメラがどちらを向いていたかを求めるために使います。

走行距離計

タイヤの回転などから移動距離を測ります。GNSSの信号が弱い区間で、走行軌跡を補う情報になります。国土地理院のマニュアルは、これらに加えて解析ソフトウェア、図化機、地形図編集装置までを標準的な構成に含めています(移動計測車両による測量システムを用いる数値地形図データ作成マニュアル(案))。

MMSで3次元座標を求める仕組み

仕組みの要点は、レーザーや写真を記録した瞬間の車両位置と姿勢を求め、その観測へ座標を付けることです。周囲の計測と走行軌跡の計測は別々に進み、解析時に結び付きます。

MMSの走行計測からレーザー・写真と走行軌跡を解析し、座標付きの点群・画像を作る流れ

作業の流れは次のようになります。

  1. GNSS、IMU、走行距離計が、走行中の車両の位置と姿勢を記録します。

  2. レーザースキャナとカメラが、同じ走行中に周囲の距離と写真を記録します。

  3. それぞれの記録を時刻で対応させ、車両の走行軌跡を解析します。

  4. センサー同士の取付位置と角度を反映し、レーザー点と写真へ座標を与えます。

  5. 複数回の走行データを調整し、点群、位置・姿勢付き写真、図化用データを作ります。

センサー同士の取付位置や向きには、わずかなずれがあります。その関係を測り、正しく補正できる状態へ整えるのがキャリブレーションです。取付状態が変わると同じ観測へ違う座標が付くため、MMSでは定期的な確認が欠かせません。

国土地理院のマニュアルは、最適軌跡解析を「IMUの経路を精密に算出すること」と説明しています。その解析結果とキャリブレーションデータを使い、各時点でのカメラとレーザースキャナの位置・姿勢を求めます。走るだけで完成した地図が出るのではなく、走行後の解析と点検を経て成果になります。

MMSで得られるデータ

代表的な成果は3次元点群と画像です。目的に応じて、これらから道路や沿道の地物を読み取り、数値地形図や台帳用のデータへ加工します。

データ

中身

主な使い方

3次元点群

道路面や沿道地物のXYZ座標、反射強度など

形状・高さ・距離の確認、断面作成

位置・姿勢付き画像

撮影位置と向きが分かる連続写真

標識や路面表示の判読、点群の補助

色付き点群

点群へ画像の色を対応させたもの

周囲の把握、対象物の見分け

数値地形図データ

点群と画像から地物を図化・編集したデータ

道路台帳附図などの作成・更新

点群は、対象物の名称や意味を自動的に持つわけではありません。たとえば同じ柱状の点群でも、電柱、標識柱、照明柱のどれかは、画像や周辺情報を見て判読する必要があります。MMSで多くのデータを取れても、用途に合わせた抽出・分類・編集は後工程として残ります。

MMSの主な用途

MMSは、車両が通れる線状の空間を連続して記録する用途に向きます。道路、河川堤防、トンネルなど、移動経路に沿って対象が続く場所で強みを発揮します。

道路台帳と地図の更新

道路面、縁石、標識、電柱、ガードレールなどを一度の走行で広く記録できます。国土地理院のマニュアルは、公共測量における道路周辺の数値地形図データ作成を対象にしています。

道路施設の維持管理

同じ区間を時期を変えて計測すれば、道路や沿道施設の状態を比較する材料になります。写真は表示内容や外観の確認に、点群は位置や形状の確認に使えます。

河川堤防の状態把握

国土交通省近畿地方整備局の報告では、堤防の経年変化、縦断形状、構造物点検の基礎情報への利用が検討されています(移動計測車両(MMS)による計測技術の河川管理業務への活用について)。特定の測点だけでなく、走行区間を連続的に記録できる点が生かされています。

3次元の現況記録

道路周辺の地物を位置付きで残せるため、設計前の現況確認や、離れた場所からの状況把握にも使えます。ただし、レーザーが届かない裏側や車両から見えない場所まで記録できるわけではありません。

MMSとほかの計測技術の違い

MMSはLiDARの別名ではなく、複数のセンサーと解析を組み合わせたシステムです。違いは「何を測るものか」と「どのように移動するか」で整理できます。

用語・方式

役割

MMSとの関係

LiDAR

レーザーで対象までの距離を測るセンサーまたは技術

MMSで周囲の形を測る構成要素の一つ

地上型3Dレーザースキャナ

三脚などに据え、停止した位置から周囲を測る機器

MMSは車両で移動しながら連続計測する

LidarSLAM

周囲の特徴から自己位置推定と地図作成を同時に行う技術

MMSは主にGNSS・IMU・走行距離計で軌跡を求める

UAVレーザ測量

ドローンから地表や構造物へレーザーを照射する方式

上空から測りやすい範囲を担い、地上走行のMMSと視点が異なる

MMSでもGNSSを補うためにSLAMを組み合わせる構成はあり得ます。名称だけで内部方式を決め付けず、位置を求めるセンサーと解析方法を仕様書で確認する必要があります。

MMSのメリット

大きな利点は、移動経路に沿った広い範囲を、点ではなく連続したデータとして取得できることです。交通規制や立入りの条件が許せば、車両を走らせながら道路周辺を記録できます。

  • レーザーと写真を同時に取得し、形と見た目を対応させられる

  • 道路沿いの対象を同じ座標系で連続して記録できる

  • 取得時点の現況を後から画面上で確認できる

  • 同じ経路を再計測し、時期の異なるデータを比較できる

ただし、「速く走れること」と「必要な精度の成果が早く完成すること」は同じではありません。走行後には軌跡解析、座標の調整、不要点の除去、対象物の抽出、精度確認が必要です。用途によっては現地で標定点を設置し、別の測量方法で座標を求めます。

MMSの限界と精度を左右する条件

MMSの精度は、レーザースキャナの性能だけでは決まりません。GNSSの受信環境、IMUの誤差、車速、対象までの距離、遮蔽物、センサーの取付状態、解析方法が重なって成果へ影響します。

GNSSが受信しにくい場所

高層建物の間、トンネル、樹木の下などでは、衛星信号が遮られたり反射したりします。IMUと走行距離計が短い区間を補えますが、IMUの誤差は時間とともに積み上がります。

国土地理院のマニュアルは、GNSSだけで必要な精度が得られない場合、走行距離計による補完や、標定点を使った測地座標系への調整が必要になると説明しています。GNSSが途切れても直ちにデータが失われるわけではありませんが、長く途切れる経路ほど事前の対策が重要です。

車両から見えない場所

レーザーとカメラは、物の裏側を通り抜けて測れません。駐車車両、植生、防護柵、建物の角などが遮ると、その背後にデータのない部分が生じます。必要な面が見える走行経路を選ぶほか、反対車線からの走行、徒歩計測、据置型スキャナなどで補います。

距離と面の向き

車両から遠い対象では、レーザー点の間隔が広がり、写真の細部も読み取りにくくなります。斜面やレーザーが浅い角度で当たる面では、近い場所と同じ密度で測れるとは限りません。河川管理の報告も、植生による死角、面の傾きによるレーザーの当たり方、距離による点群密度と画像解像度の低下を課題に挙げています。

キャリブレーションと精度確認

センサーの取付位置と角度がずれると、点群と画像の重なりや座標に系統的な誤差が出ます。定期的なキャリブレーションに加えて、既知の座標を持つ標定点や別の測量結果と照合し、要求精度を満たすかを確認します。

公共測量では、国土地理院のマニュアルに沿って作業計画、キャリブレーション、解析、調整、精度管理、成果の整理を行います。民間の調査でも、最初に「どの対象を、何の判断に、どの精度で使うか」を定めると、必要な補測と確認方法を選びやすくなります。

まとめ

MMSとは、GNSS・IMU・走行距離計で車両の位置と姿勢を測りながら、レーザースキャナとカメラで道路周辺を記録する移動計測システムです。走行軌跡と周囲の観測を解析で結び付け、座標付きの点群や画像を作ります。

移動経路に沿った広い範囲を連続して取得できる一方、GNSSの遮断、遮蔽物、対象までの距離、センサーの取付状態は精度と欠測へ影響します。LiDARの性能だけで判断せず、必要な成果、走行環境、補測、精度確認までを一つの計測計画として考えることが大切です。


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bestat 編集部について

bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。https://bestat-data.com/3dcore

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