2026.09.03

  • #お役立ちコラム

LiDARとToFセンサーの違い|分類の重なりと用途別の選び方

LiDARとToFセンサーは、どちらも対象までの距離や奥行きを測る場面で使われます。ただし、同じ階層に並ぶ、完全に別のセンサーではありません。

LiDARは光を使って距離や対象の性質を測る装置・システムを指します。ToFは、信号が往復する時間から距離を求める測距原理です。そのため、ToF方式のLiDARもあれば、ToFではないLiDARもあります。

本記事では、この重なりを最初に整理し、代表的なLiDARとToFカメラの違い、dToFとiToF、用途から選ぶときの確認項目を説明します。

執筆: bestat 編集部


LiDARとToFセンサーの違い

LiDARとToFセンサーの最も大きな違いは、何を分類する言葉かです。LiDARはシステム、ToFは距離の求め方を表すため、両者には重なりがあります。

比較する言葉

主に表すもの

対になる例

LiDAR

光源、受光部、光学系、測距回路などを含む装置・システム

レーダー、ステレオカメラ、超音波センサー

ToF

信号の往復時間または、それに対応する位相差を使う測距原理

FMCW、三角測量、構造化光

ISO/TS 19159-2の公開プレビューは、LiDARを光源、光検出系、タイミング回路、送受光学系からなるシステムとして定義しています。その注記では、ToF LiDARを、短いレーザーパルスの送出時刻と反射光の受信時刻から距離を求めるものと説明しています。

LiDARは装置・システム、ToFは測距原理を表し、同じ測距装置が両方に該当する関係

ここで大切なのは、図の上下を別々の分類軸として読むことです。上段は装置の構成、下段は測距原理を示しています。

「LiDARかToFか」という二者択一ではなく、「そのLiDARはToF方式かFMCW方式か」「そのToFセンサーは一点を測るか、面で距離画像を取るか」と分けて確認すると、仕様を正しく読めます。

LiDARとは

LiDARは Light Detection and Ranging の略で、光を照射し、戻ってきた光から対象までの距離や位置を測る技術です。光源、受光素子、送受光の光学系、信号処理などを組み合わせたシステムとして成立します。

よく知られる走査型LiDARは、細いレーザー光の方向を変えながら多数の場所までの距離を測ります。各測定点に方向情報を組み合わせると、周囲の形を点の集まりとして表せます。この出力が点群です。

一方、LiDARは走査型だけではありません。光を面へ広げ、受光素子の配列で範囲を一度に測るフラッシュLiDARもあります。機械的に回転する部分が見えないからLiDARではない、とは判断できません。

また、LiDARの測距方式もToFだけではありません。産業技術総合研究所の解説は、LiDARの距離測定方法としてToF方式とFMCW方式を挙げています。FMCWは周波数を変えた連続光を送り、送信光と受信光の周波数差から距離などを求める方式です。

ToFセンサーとは

ToFは Time of Flightの略で、信号が対象まで進み、反射して戻るまでの時間を利用する測距原理です。光を使う場合、距離は「光速×往復時間÷2」で求めます。2で割るのは、測った時間に往路と復路が含まれるためです。

日常的に「ToFセンサー」と呼ばれる製品は、赤外光を範囲へ照射し、画素ごとの距離を測るToFカメラや距離画像センサーを指すことが多くあります。Texas Instrumentsの技術資料も、2次元の画素配列で画素ごとの距離を測り、距離画像を得る構成を説明しています。

ただし、ToFという言葉自体はカメラの形を指定しません。一点の距離を測るセンサーも、多数の画素で面を測るカメラも、飛行時間を使えばToF方式です。光ではなく超音波などの伝搬時間を測る場合にも、広い意味でToFという言葉が使われます。

さらに、レーザーを使うToFカメラは、フラッシュLiDARとして分類される場合があります。Analog Devicesの解説も、面を一度に記録するToFを、走査型ではないフラッシュLiDARの方式として説明しています。

dToFとiToFの違い

光学式のToFは、距離の求め方によってdToFとiToFに分けられます。dToFは時間差を直接測り、iToFは変調した光の位相差から時間を間接的に求めます。

dToFは往復時間を直接測る

dToFは direct ToFの略です。短い光パルスを出した時刻と、反射光を検出した時刻の差を測ります。戻ってくる光が弱い場合には、わずかな光子を検出できるSPADなどの受光素子が使われます。

ソニーセミコンダクタソリューションズの技術解説は、dToFを遠距離の対象にも使える方式として紹介しています。車載LiDAR、長い距離を測るセンサー、スマートフォンの深度センサーなどに使われます。

iToFは位相差から距離を求める

iToFは indirect ToFの略です。明るさを周期的に変えた光を照射し、戻った光の波がどれだけずれたかを画素ごとに測ります。その位相差を時間差へ換算して距離を求めます。

同じソニーの解説では、iToFは近距離から中距離で、高速かつ高解像度の3D情報を取る用途に適するとされています。ロボットのピッキング、荷物の位置や充填状態の把握、人の姿勢や侵入の検出など、範囲内の奥行きを一度に知りたい用途で使われます。

ただし、「dToFなら必ず長距離」「iToFなら必ず高解像度」とは限りません。測れる距離、画素数、視野、フレームレート、外乱光への耐性は、光源、受光素子、レンズ、信号処理、設定によって変わります。方式名は傾向を知る手がかりであり、製品仕様の代わりではありません。

代表的な構成で見た違い

実務でよく比較されるのは、周囲を順番に測る走査型LiDARと、範囲を面で捉えるToFカメラです。前者は点群を広い範囲へ配置しやすく、後者はカメラ視野内の距離画像を連続して取りやすい構成です。

走査型LiDARが細い光を順に走査して点群を作り、ToFカメラが面を一括取得して距離画像を作る代表構成

この図は代表例です。フラッシュLiDARのように面で取得するLiDARも、複数方向を測るToFセンサーもあります。製品名のLiDARまたはToFだけで、走査方法を決めつけないことが重要です。

確認項目

走査型LiDARの代表的な構成

面で取得するToFカメラの代表的な構成

光の当て方

細い光の向きを順に変える

視野の範囲をまとめて照らす

受け取り方

方向ごとの距離を順に得る

画素ごとの距離を同じフレームで得る

主な出力

2Dまたは3Dの点群

距離画像、深度マップ、点群

視野の作り方

回転、ミラー、光学走査、複数ユニットなど

レンズと画素配列で面を捉える

得意な場面の例

周囲の地図作成、移動体の自己位置推定、広い対象の計測

近くの物体認識、ジェスチャー、ピッキング、人数や充填状態の把握

表は一般的な構成を比べたもので、方式そのものの性能保証ではありません。同じ用途でも、必要な距離と視野、対象の動き、設置位置によって適する構成は変わります。

用途から選ぶときの確認項目

LiDARとToFセンサーを選ぶときは、呼び名より、必要なデータと測定条件を先に決めます。最低でも次の項目を製品仕様で確認します。

  • 測る範囲:最短距離と最長距離の両方を確認します。近すぎる場所が測れないセンサーもあります。

  • 視野:水平・垂直の画角と、視野内で距離を得られる位置を確認します。

  • 空間分解能:小さな物や細い段差を分けて捉えられるかを確認します。画素数だけでなく、距離と画角による点の間隔も見ます。

  • 時間分解能:動く対象なら、フレームレート、走査周期、読み出しの時間差を確認します。

  • 出力形式:一点の距離、2Dスキャン、距離画像、3D点群のどれが必要かを決めます。

  • 利用環境:日光、照明、雨や霧、粉じん、温度、振動、他の光学センサーの有無を確認します。

  • 対象の表面:黒色、鏡面、透明体、光沢の強い面を実物で試します。

  • 安全と設置:レーザーの安全クラス、波長、取付位置、保護構造を用途に合わせて確認します。

周囲の形を広く点群として取得し、自己位置推定や地図作成へ使うなら、必要な方向を覆えるLiDARが候補になります。視野内の人や物体までの奥行きを連続して得たいなら、ToFカメラが候補になります。

ただし、候補の段階で名称から決め切らないでください。フラッシュLiDARとToFカメラの境界は製品資料によって異なります。最終的には、測距原理、照射方法、受光方式、出力データを仕様書で確認します。

LiDARとToFに共通する誤差要因

どちらも照射した光の反射を使う構成では、対象と環境によって測定結果が変わります。カタログの測距範囲だけでは、実際の場所で安定して測れるかは分かりません。

主な確認対象は、外乱光、反射率、多重反射、遮蔽、別のセンサーとの干渉です。BaslerのToFカメラ資料は、日光などの外乱光が画素の受光容量を使い、信号対雑音比を下げることや、複数経路の反射が誤った距離につながることを説明しています。

黒い面は戻る光が弱くなりやすく、鏡面は別の方向へ光を返しやすくなります。透明体では表面と奥の反射が混ざる場合があります。部屋の隅や光沢面の間では、直接ではない経路を通った光が戻り、実際より長い距離として計算されることがあります。

このため、比較試験では白い平板だけを測らず、実際の対象、距離、角度、照明、動きに近い条件を用意します。点群や距離画像に欠損、飛び点、輪郭のにじみが出る場所を確認すると、仕様表だけでは分からない違いを見つけられます。

まとめ

LiDARとToFセンサーは、完全に排他的な分類ではありません。LiDARは光を使う測距システム、ToFは信号の飛行時間を使う測距原理です。そのため、ToF方式のLiDARや、フラッシュLiDARに分類されるToFカメラがあります。一方、FMCW方式のようにToF以外のLiDARもあります。

代表的な走査型LiDARは、細い光を順に動かして点群を作ります。代表的なToFカメラは、画素配列で面の距離画像をまとめて取得します。ただし、この違いは製品構成の傾向であり、LiDARとToFという名前だけからは決まりません。

選定では、dToFかiToFか、走査か面取得か、測距範囲、視野、分解能、フレームレート、出力形式、外乱光と対象表面への耐性を確認します。最後は実際の対象と環境で測り、欠損や誤差の出方まで比べることが重要です。


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bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。https://bestat-data.com/3dcore

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