2026.09.07

  • #お役立ちコラム

デジタルツイン 国土交通省の取り組み|PLATEAU・BIM/CIMの違い

国土交通省のデジタルツインは、1つの巨大なシステムの名称ではありません。都市の3Dデータを整備するPLATEAU、分散するデータをつなぐ国土交通データプラットフォームなど、役割の異なる施策があります。土木業務で3Dモデルを活用するBIM/CIMも関連施策です。

本記事では、各施策の違いと2026年時点の動向、PLATEAUの使い方、公開データでできること・できないことを整理します。特に、製造業やインフラ保全で自社の設備まで再現したい場合の判断基準も解説します。

執筆: bestat 編集部


国土交通省のデジタルツイン施策を先に一覧で比較

3D都市モデルが欲しいならPLATEAU、公的データを横断して探すなら国土交通データプラットフォームを確認します。国の土木業務・工事における3Dモデルの扱いを知りたい場合はBIM/CIMです。「建築・都市のDX」は、PLATEAU、建築BIM、不動産ID、地理空間情報を連携させる上位の政策です。

施策

主な役割

利用者が得られるもの

主な利用場面

PLATEAU

3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化

建築物・道路・地形・災害リスクなどの3Dデータ

まちづくり、防災、モビリティ、環境分析

国土交通データプラットフォーム

国土交通省内外のデータを連携・可視化

データを横断検索し、重ねて見る環境

インフラ情報や地盤情報などの探索・分析

建築・都市のDX

PLATEAU、建築BIM、不動産IDなどを一体化

建物内外の情報をつなぐ政策・データ連携環境

建築確認、まちづくり、防災、新サービス

BIM/CIM

土木事業で3Dモデルや関連情報を共有・活用

発注時の実施内容、作成するモデル、納品要件

国直轄の設計・施工、合意形成、施工計画

都市モデルの整備、公共データの連携、土木事業での3Dモデル共有という3施策の役割を表した図

国土交通省が目指すデジタルツインとは

デジタルツインとは、現実空間の状態をデジタル空間に再現し、可視化や分析の結果を現実の判断へ戻す仕組みです。国土交通省は、都市やインフラの3Dモデルに各種データを連携させます。これを行政業務の効率化、スマートシティ、防災、民間サービスの創出につなげる構想です(国土交通データプラットフォーム)。

ただし、3Dの地図を表示しただけで、すべてが現実とリアルタイム同期するわけではありません。PLATEAUは都市デジタルツインの土台となる、標準化された3D都市モデルです。センサー、人流、気象などを目的に応じて組み合わせることで活用範囲が広がります。

国土交通省は「建築・都市のDX」として、PLATEAUに建築BIMや不動産ID、地籍などを連携させます。目指すのは、建物の内外をまたぐ高精細なデジタルツインです(国土交通省「建築・都市のDX」の具体的な取組)。

PLATEAUは都市デジタルツインの基盤データ

Project PLATEAU(プラトー)は、国土交通省が2020年度から進める3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクトです。建物を用途、構造、階数などの「意味」を持つ地物として扱えます。この点が、見た目を再現する一般的な3D CGとの大きな違いです(Project PLATEAU「About」)。

2025年度末までに329都市で3D都市モデルが整備されました。2026年7月公表の「PLATEAUビジョン2026」は、データ整備・更新の効率化、サービス実装、海外展開を重点化しています。属性情報を部分的に持つデータや、AIで作成したデータも対象に含める方針です(国土交通省「PLATEAUビジョン2026」)。

3D都市モデルに含まれる情報

PLATEAUの標準製品仕様書は、建築物、道路・鉄道、橋梁、地形、土地利用、災害リスクなどを対象にしています。すべての都市に全種類がそろうわけではありません。対象地域のデータカタログで整備範囲、取得年度、LOD、属性を確認します(3D都市モデル標準製品仕様書 4.1.1)。

データの例

分かることの例

建築物

外形、高さ、用途、構造、階数など(収録属性はデータごとに異なる)

交通・地形

道路や鉄道の配置、地表の起伏

都市計画・土地利用

用途地域などの都市計画情報、土地の使われ方

災害リスク

洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域などとの位置関係

「都市設備」は工場の生産設備を意味しません。標準製品仕様書では、街路灯、道路標識、信号機、ベンチなど、屋外に固定された小規模設備を指します(同 4.14 都市設備モデル)。

LODが上がるほど形状は詳しくなる

LOD(Level of Detail)は、3D都市モデルの形状の詳しさを示す段階です。建築物モデルではLOD0からLOD4までが定義されていますが、実際に整備されるLODは都市・範囲・建物によって異なります。

LOD

おおまかな表現

主に読み取れること

LOD0

上から見た平面形状

建物の位置と輪郭

LOD1

単純な立体

建物のボリュームとおおよその高さ

LOD2

屋根・壁などを区別した外形

屋根形状や外壁面

LOD3

窓・扉などを含む詳細な外形

より詳しい建物外部

LOD4

部屋・壁・床・天井などの屋内表現

建物内部の空間構成

よく流通するLOD1・LOD2の建築物データから、工場内の配管や生産設備までは確認できません。LOD4が仕様上定義されていても、対象建物にLOD4データが存在するとは限らない点に注意してください(PLATEAU「LODレベルによる表現の違い」)。

PLATEAUの閲覧・ダウンロード方法

まず内容を確かめるだけなら、ブラウザで動く「PLATEAU VIEW」が便利です。分析やシステム開発に使う場合はG空間情報センターからデータをダウンロードします。標準形式はCityGMLで、一部の地域ではOBJ、FBXなども提供されています(PLATEAU よくある質問)。

  1. PLATEAUのStart GuideからPLATEAU VIEWを開き、対象地域を検索する

  2. 建築物、災害リスクなど必要なレイヤーを表示する

  3. データカタログで取得年度・整備範囲・LOD・属性を確認する

  4. G空間情報センターから必要な形式を入手する

  5. GIS、3Dソフト、ゲームエンジンなど用途に合う環境で利用する

PLATEAUの3D都市モデルやソフトウェアは、CC BY 4.0等のオープンライセンスで提供され、手続き不要で商用利用も可能です。利用するデータごとのライセンスと出典表示条件は、公開元で必ず確認してください。

PLATEAUの代表的な活用分野

3D都市モデルの価値は、街を立体表示することより、災害リスクや人流、気象、建物属性などを同じ座標上で重ね、施策を比較できる点にあります。国土交通省のユースケースでは、まちづくり、防災、モビリティ、環境・エネルギー、地域活性化など幅広い実証とサービス開発が公開されています。

【画像3をここに挿入 — 洪水、交通・人流、日射・熱、再開発計画を1つの3D都市モデル上で分析するイメージ】

活用分野

3D都市モデルを使う例

防災

浸水深を建物に重ね、避難経路や被害範囲を検討する

都市計画

開発後の景観、日影、周辺環境への影響を比較する

モビリティ

人流・交通データを重ね、移動や混雑を分析する

環境・エネルギー

日射量、風環境、エネルギー需要を推定する

合意形成

計画案を立体表示し、住民や関係者が同じ視点で確認する

実装を考えるときは「3D化すること」ではなく、「どの判断を改善するか」から始めます。必要な地域、属性、精度、更新頻度を先に決めると、過剰なデータ整備を避けられます(PLATEAU Use Case Guide)。

国土交通データプラットフォームと建築・都市のDX

国土交通データプラットフォームは、PLATEAUとは別の3D都市モデルを作る事業ではありません。国土交通省内外に分散するデータをAPI等で連携し、検索、可視化、重ね合わせを行う入口です。3次元データ視覚化、データハブ、情報発信の機能を持ち、PLATEAUや国土地盤情報などを横断して扱えます。

一方、建築・都市のDXは、PLATEAU、建築BIM、不動産ID、地籍などを連携させる政策です。PLATEAUは都市・屋外の共通基盤、BIMは個々の建物の詳細情報です。不動産IDは異なる情報を結びつけるキーになります。

BIM/CIMは土木事業の情報共有・業務効率化の枠組み

BIM/CIMは、調査・測量・設計・施工・維持管理で扱う情報をデジタル化し、受発注者間の共有を容易にする取り組みです。PLATEAUのような全国共通の都市データ配布ではなく、個別の土木業務・工事で、目的に応じた3Dモデルを作成・活用します(関東地方整備局「BIM/CIMとは」)。

国土交通省の直轄土木業務・工事では、2023年度からBIM/CIMが原則適用されています。ただし、すべてを高精細に作るルールではありません。原則適用資料は、活用目的を達成できる範囲・精度で作成し、義務項目のモデル詳細度は200〜300程度を目安としています。また、3次元設計が標準化されていない現状を踏まえ、設計図書を2次元図面で扱える運用も残っています(国土交通省「令和5年度BIM/CIM原則適用について」)。

比較項目

PLATEAU

BIM/CIM

対象

都市・地域

個別の土木構造物や事業

データの作り手

主に地方公共団体(国が支援)

発注者・受注者

公開性

オープンデータ

案件関係者間で利用する成果品が中心

詳細さ

都市全体を共通仕様で表現

活用目的と対象部位に応じて設定

PLATEAUを使う前に確認したい精度と更新頻度

PLATEAUは多くの検討に使える一方、測量成果や設備図面の代わりではありません。標準製品仕様書は地図情報レベル2500を基本としています。点群や画像から図化した地物の適合水準は、水平位置の標準偏差1.75m以内、標高0.66m以内です(3D都市モデル標準製品仕様書 6.3.3)。

確認項目

公式情報の目安

利用時の判断

水平位置

地図情報レベル2500では標準偏差1.75m以内

敷地周辺の把握には使えても、mm単位の干渉確認には使わない

標高

標準偏差0.66m以内

搬入や施工の詳細検討には追加測量を検討する

更新頻度

一般に1〜5年程度、地域により異なる

データ取得年度と現況の差を確認する

整備範囲

都市・地物・LODごとに異なる

対象地域のカタログを先に見る

【画像4をここに挿入 — 都市スケールの公開3Dデータから、レーザースキャンで取得した工場内部の詳細な現況データへ拡大する様子】

浸水想定区域と工場敷地の重なりや、周辺道路との位置関係を見るなら、PLATEAUは有力な出発点です。一方、設備と配管の干渉や点検通路の幅を確認するには、レーザースキャンや写真測量などで現況を取得します。

また、3D都市モデルは地域ごとに定期取得される航空写真などを基に作られるため、最新の建設状況が反映されていない場合があります。公式FAQでは一般的な更新頻度を1〜5年程度とし、2027年度までに約500都市へ拡大する目標を示しています(PLATEAU よくある質問)。

自社で活用するときの5ステップ

導入の成否は、使うソフトより先に「何を判断したいか」で決まります。PLATEAUを試す場合も、自社で高精度なデジタルツインを構築する場合も、次の順序で範囲を絞ると進めやすくなります。

  1. 目的を決める:防災、搬入計画、設備保全など、改善したい判断を1つ選ぶ

  2. 公開データを確認する:対象地域、取得年度、LOD、属性、ライセンスを見る

  3. 不足を切り分ける:屋内情報、現況、精度、更新頻度の不足を一覧にする

  4. 必要範囲だけ取得する:点群、写真、センサー、既存図面を目的に応じて追加する

  5. 小さく検証する:1区画・1業務で効果と更新負担を確かめてから広げる

公開データと現地計測の境界を先に引けば、都市全体や工場全体を過剰に作り込まずに済みます。建屋内の現況取得や点群活用の範囲に迷う場合は、対象区画と必要な寸法精度を整理したうえでご相談ください。→ 3D.Core for Point Cloud について相談する

よくある質問

国土交通省のデジタルツインは無料で使えますか?

PLATEAUの3D都市モデルや公開ソフトウェアは、手続き不要でダウンロードでき、商用利用も可能です。ただし、データを加工・変換する環境、システム開発、自社の現地計測、運用・更新には別途費用がかかります。

PLATEAUはリアルタイムの都市データですか?

PLATEAUの基本データは、航空写真や都市計画基本図などを基に整備される静的・定期更新のデータです。リアルタイム分析を行うには、センサー、人流、交通、気象などの動的データを別途連携します。

PLATEAUとGoogleマップの3D表示は何が違いますか?

PLATEAUはCityGMLを標準形式とし、建物や道路を意味のある地物として扱い、属性情報や災害リスクなどを重ねられるオープンデータです。地図サービスの3D表示とは、データ構造、ライセンス、加工・分析の自由度が異なります。

自社工場の内部もPLATEAUで確認できますか?

一般的なLOD1・LOD2の建築物モデルは外形が中心で、配管、生産設備、点検通路などの屋内現況は含みません。対象建物に必要な屋内データがなければ、レーザースキャンや写真測量などで必要な範囲を取得します。

まとめ

国土交通省のデジタルツイン施策には役割分担があります。PLATEAUは都市の3D基盤、国土交通データプラットフォームはデータ連携の入口、BIM/CIMは土木事業での情報共有・活用ルールです。2026年のPLATEAUは、更新の効率化とサービスの継続利用を重視する段階へ進んでいます。

まずPLATEAU VIEWで対象地域とデータの中身を確認し、目的に必要な精度・鮮度・屋内情報が足りるかを判断してください。公開データで足りない部分だけを現地計測や自社データで補うことが、無理のないデジタルツイン構築につながります。


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bestat 編集部について

bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。https://bestat-data.com/3dcore

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