2026.04.24

  • #インタビュー

課題先進国の現場から、世界へ疾走する

デジタルガレージ・遊佐氏が語る、3Dデータ産業の可能性とbestatへの期待

今回お話を伺った方

遊佐 康佑 様

株式会社DGインキュベーション
投資第一部 部長

シードラウンドに続いて、シリーズAでも引き続き共同リードVCとして関わってくださいました。そのbestatへの評価の根拠を、遊佐康佑様に率直に語っていただきました。デジタルガレージにおいて数多くのスタートアップを目利きしてきたVCの目線から見た、3Dデータ産業の可能性、そしてbestatに期待する未来像とは。bestat代表・松田尚子がお話を伺いました。


※本文中、敬称を略させていただきます。

「進化が明確だった」——追加投資を決めた理由

松田:シードから引き続き、シリーズAでも共同リードという形でご参加いただきました。改めて、その判断の背景を聞かせていただけますか?

遊佐:大前提として、一度投資した会社すべてに追加で投資できるわけではありません。事業の伸びが見えているかどうか、タイミングも含めて、様々な条件が重なる必要があります。その中でbestatに、共同リードとして追加投資をさせていただいたのは、初回投資の頃からの進化が明確だったからです。

シードの時点では、技術の確からしさは誰が見てもわかりました。でも、それをどう社会実装するかというのは、まだはっきりしていませんでした。それが今回は違いました。製造業やインフラ業のデジタルツインという、現場の課題が深くニーズが明確な領域に仮説を持って入っていったこと、誰もが知っているような大企業のお客様を初期から獲得していたこと、業界内の横展開でさらに成長していく姿が想像できたこと。そうした変化と将来への期待感を背景に、シリーズAをリードさせていただきたいと松田さんにお願いしました。

3Dデータの会社が多様な産業を耕すことが、なぜ強みになるのか

松田:多様な業界に展開していることを、「軸が定まっていない」と見る向きもあるかもしれません。その点はどうお考えですか?

遊佐:今取り組まれていることの本質は、異なる業界や地域で複数のユースケースを耕していくことで、「3Dデータを使って何ができるか」という地図を作っているということだと思っています。例えば、ある国内製造業のお客様とのプロジェクトで乗り越えた技術的ハードルや習得したノウハウが、海外のインフラ案件で活用されています。ローカルのニーズを丁寧に拾っていくことが、実はグローバル展開の先取りになっている。そういう積み上げ方をしていると捉えています。

松田:私たちはよく、インターネットの会社が金融や銀行に事業展開したように、3Dデータの会社が複数の産業をやっていく、という話をします。遊佐さんはその方向性をどう見ていますか?

遊佐:そのお話に、私も強く共感しています。3Dデータという基盤を持つ会社が、製造業をやり、インフラをやり、やがて別の産業もやっていく。まだその絵を「わかった」と言ってくれる人は少ないですが、私はそこに確かな可能性を見ています。

お客様と同じ言語で話せる——キャッチアップスピードという強み

松田:ありがとうございます。実際にその方向性への共感が確信に変わった瞬間は、どんな時でしたか?

遊佐:追加投資を決める前に、実際のお客様にお話を伺う機会がありました。その時です。松田さんから以前聞いていた話と、お客様がおっしゃっていた現場での課題感が、驚くほど一致していたんです。

業界によって刺さるポイントは違うし、専門用語も難しい。そこにきちんとキャッチアップして、お客様と同じ言語で話せるようになっていく。「毎回お客様に教えていただくことばかり」とおっしゃっていましたが、その姿勢こそが強みだと思います。それがなければ、ニッチな領域で信頼を築くことはできない。

そういった努力と信頼の積み重ねが礎となり、お客様とサービスの歯車が噛み合って回り始めているように見えています。

ラストワンマイルの実装力——海外の大型AIにも揺るがない参入障壁

松田:海外の大型AIプレイヤーが参入してきた場合を、どう見ていますか?

遊佐:そこはあまり心配していないんです。AIが日進月歩する昨今、アルゴリズム自体は、確かに大手が開発してくることはあるでしょう。でも、bestatが強いのはそこではないと考えています。現場の業務に直結する「ラストワンマイル」、つまり図面化だったり、セグメンテーションしてパーツに分けることだったり、そこにドメインナレッジをしっかり織り込んで実装できるかどうか、というところです。

各業界の現場ってそれぞれ全然違うんです。その細かいニーズに応えられるかどうかが、B2Bにおける本当の参入障壁になる。大手が汎用的なアルゴリズムを持ってきても、現場に合わせた最後の一手は、そう簡単には真似できない。そこを着実に積み上げてきていることこそが、bestatのMoat(持続的な競合優位性)になると思っています。

次のステージへ——仕組み化と組織づくりへの期待

松田:今後、さらに成長していくために、どんな変化が必要だとお考えですか?

遊佐:シリーズAがクローズしたら、次のステップとして期待しているのは「仕組み化」です。今は松田さんのリソースがかなり個人の力として使われている部分がある。営業を例に挙げると、インバウンドを待つのではなく、一つの業界でPMFしたユースケースを横展開していく仕組みを作っていく段階に入ってほしいなと。

松田さんには、そこからさらに先の仕事、たとえばグローバル展開といったところに集中してほしいです。それを実現するためには、事業が止まらない状態でファンドレイズができる体制、つまりCFOや管理系の人材も含めた組織づくりが次の課題になってくると思っています。

日本から世界へ——3Dデータが拓くグローバルの可能性

松田:グローバル展開という観点では、どんな期待を持ってくださっていますか?

遊佐:台湾に行かれた話を聞いて可能性を感じました。日本だとまだ「デジタルツインって本当にメリットあるの?」という話になることがある。でも台湾では、そういう話にならなかったとおっしゃっていた。

それはなぜかというと、台湾は海外との取引が多く、人手不足も深刻で、デジタルツインに対する切迫感が違う。そして台湾は世界を見ている。そこで通用したというのは、単に台湾に売れたという話ではなく、グローバルで通用する手応えだと私は捉えています。

次は東南アジアも面白いと思います。歴史的にエネルギーを輸出入してきた国が多く、古い設備やインフラが数多くあります。「3Dデータがない、老朽化している構造物を正確に3D化したい」というニーズは、実はどの国にも存在します。日本のローカルで培ったユースケースと知見が、そのままグローバルで生きる局面は必ずあります。

日本から出てきた製造業特化のディープテックAIスタートアップ、と一言で言えたとき、海外のお客様・投資家には非常に響くはずです。課題先進国である日本で、現場の最前線と向き合いながら磨いてきた技術と知見は、それだけで大きな説得力を持つからです。

姿勢を崩さず、さらにスピードを

松田:最後に、bestatへの期待を一言いただけますか?

遊佐:現場にある一つひとつの課題解決に、疾走していただきたいです。
シードの頃から見てきましたが、bestatは変わったと思います。技術があることは最初からわかっていたものの、その技術をどこに届けるかが見えていませんでした。それが今は違う。製造業・インフラという根深い課題に悩んでいる業界を見つけて、今となってはどの現場に行ってもお客様の言葉で話せるようになっています。教えてもらいながら、一緒に考えながら、少しずつ信頼を積み上げてきました。その積み重ねが今のbestatをつくっていると思っています。

フィナンシャルリターンはもちろん大事ですが、私がbestatに投資し続けているのはそれだけじゃない。技術があって、現場があって、そこに本当に必要とされているものを届けている会社だと思っているからなのです。その姿勢を崩さないまま、さらにスピードを上げていってほしい。私たちも、できる支援は全力でしていきたいと思っています。


編集後記

今回、遊佐様にお話を伺って改めて感じたのは、普段の会話の中で交わしてきた言葉が、こうして一本の対話として紡がれると、また違う重みを持つということでした。

印象的だったのは、「3Dデータの会社が産業をやる」という言葉です。インターネットの会社が金融をやり、銀行をやった時代と同じことが、3Dデータで起きる。その視点は、私たちbestatが目指す姿と深く重なっています。まだその絵が多くの人に伝わりきっていないからこそ、言葉を磨き続けることに意味があると感じています。

シードの頃から変わらず伴走してくださっている遊佐様が、「その積み重ねが今のbestatをつくっている」とおっしゃってくださったことは、素直に励みになりました。技術だけでも、現場だけでもなく、その両方を繋ぎ続けてきたことへの評価として受け取っています。

現場の課題を疾走して解決する。その言葉を胸に、私たちはこれからも動き続けます。
リアルとデジタルが繋がる時代をつくるために、現場で奮闘する人たちのそばに、3Dの力を持って寄り添い続けていきたいと思っています。

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