#お役立ちコラム
3D計測のキャリブレーションとは|種類・手順・確認方法を解説

3D計測におけるキャリブレーションとは、センサーの観測値から正しい3次元座標を求めるために、装置の特性やセンサー同士の位置関係を明らかにする作業です。たとえば、カメラのレンズ歪み、3Dスキャナの距離のずれ、LiDAR(レーザー光で周囲の距離を測るセンサー)とカメラの取り付け位置のずれは、取得する点群や3Dモデルの精度に影響します。
この記事では3D計測に範囲を限定し、代表的なキャリブレーションの種類、キャリブレーション実施の流れ、結果の確認方法、再実施のタイミングを解説します。
執筆: bestat 編集部
キャリブレーションで補正する「ずれ」
3D計測では、センサーが直接「正しい3次元座標」を出しているとは限りません。カメラは3次元空間を2次元画像として記録し、3Dスキャナは、レーザー光が戻るまでの時間や光を当てた角度と写り方(三角測量)などから位置を計算します。その計算には、センサー固有の特性や設置状態を表すパラメータが必要です。
キャリブレーションでは、寸法や位置が分かっているターゲットなどを観測し、実際の観測結果との対応からパラメータを求めます。求めた値を計測処理へ反映することで、次のようなずれを抑えます。
レンズ歪みによる画像上の位置ずれ
距離計測のオフセットや距離に応じて変わるずれ
スキャン方向による角度のずれ
複数のカメラやLiDAR間の位置・向きのずれ
ロボット座標系、装置座標系、世界座標系の不一致
3D計測の現場では、パラメータを推定する作業だけでなく、その値を装置へ設定することまで含めてキャリブレーションと呼ぶことがあります。そのため、作業記録には「何を基準に、どのパラメータを求め、どこへ反映したか」を残すことが重要です。
キャリブレーションが必要な理由
キャリブレーションが適切でないと、点群や3Dモデルに系統的な誤差が生じます。ランダムなばらつきとは異なり、同じ条件で同じ方向へずれやすいため、計測回数を増やすだけでは解消できません。
たとえば、カメラの内部パラメータが合っていないと、画像の端ほど特徴点の位置がずれ、写真から復元した3D形状が変形することがあります。2台のカメラの相対位置と向きがずれていると、ステレオ計測で求める奥行きに誤差が生じます。LiDARとカメラの位置関係がずれていれば、点群へ画像の色や認識結果を重ねたときに輪郭が一致しません。
また、3Dスキャナのように装置内部の距離や角度がずれている場合は、点群同士をきれいに位置合わせできても、対象物の寸法や面の形状は正しく再現されません。位置合わせの精度と、各点の計測精度は分けて考える必要があります。
主なキャリブレーションの種類
3D計測で使うキャリブレーションは、主に「センサー単体の特性を求めるもの」と「座標系同士の関係を求めるもの」に分けられます。
対象
主に求めるもの | 基準の例 | 結果の例 | |
|---|---|---|---|
カメラ内部 | 画像への投影特性 | 寸法既知のチェッカーボード | 焦点距離、主点、歪み係数 |
カメラ外部 | 基準座標系に対する位置と向き | 既知点、キャリブレーションパターン | 回転、並進 |
ステレオカメラ | 2台のカメラの相対的な位置と向き | 両方に写るキャリブレーションパターン | カメラ間の回転、並進 |
3Dスキャナ・LiDAR | 距離・角度の計測値と既知量の関係 | 基準距離、既知寸法の対象物、基準面 | オフセット、補正値、偏差 |
LiDARとカメラ | 2つのセンサー座標系の関係 | 両方で観測できるターゲット | センサー間の回転、並進 |
ロボットと3Dセンサー | ロボットとセンサーの座標系の関係 | 既知位置のターゲット | ロボット手先とセンサーの位置関係(ハンドアイ変換) |
同じ装置でも、複数種類のキャリブレーションが必要になることがあります。たとえばLiDARとカメラを組み合わせる場合、LiDARの距離特性、カメラの内部パラメータ、両センサー間の外部パラメータは別の対象です。それぞれ個別に合わせる必要があります。
カメラの内部キャリブレーション
カメラの内部キャリブレーションでは、3次元空間の点が画像上のどの画素へ投影されるかを表すパラメータを求めます。複数の写真から3Dモデルを作る処理(写真測量・SfM)、2台カメラで奥行きを測るステレオカメラ、模様の光を投影して形状を測る3Dスキャナなど、画像から3次元情報を得る処理の基礎になります。
主な内部パラメータは次の通りです。
焦点距離: 画像上で対象がどの大きさに写るかに関係する値
主点: 光軸と撮像面が交わる画像上の位置
放射方向の歪み係数: 画像中心から離れるほど直線が曲がって見える歪みを表す値
接線方向の歪み係数: レンズと撮像面の傾き(非平行)などによる歪みを表す値

一般的には、寸法が既知のチェッカーボードや円形パターンを、位置や向きを変えながら複数回撮影します。パターン上の点の3次元位置と、画像上で検出した点の対応から、投影モデルに合うパラメータを推定します。OpenCVのカメラ校正解説でも、この方法でカメラ行列と歪み係数を求めています。
撮影時は、パターンを画面の中央から四隅まで写し、正面だけと傾けた状態の両方も含めます。似た構図だけを多数撮影しても、画面全体の歪みや奥行き方向の条件を十分に捉えられないことがあります。ピント、ズーム、解像度を変更すると内部パラメータが変わる可能性があるため、実際の計測と同じ設定で行います。
外部キャリブレーション(センサーの位置と向き)
外部キャリブレーションでは、ある座標系から見たセンサーの位置と向きを求めます。通常は、形を変えずに位置と向きだけを動かす変換(3次元の回転と並進のことで剛体変換と呼びます)として表します。
たとえば、ステレオカメラでは左右のカメラ間の回転と並進を求めます。固定カメラで対象物の位置を測る場合は、設備や作業空間の基準座標系に対するカメラ位置と向きを求めます。ロボットにカメラや3Dセンサーを取り付ける場合は、ロボットの手先座標系とセンサー座標系の関係を求めるハンドアイキャリブレーションを行います。
外部キャリブレーションの結果は、どの座標系からどの座標系への変換か、単位は何かといった前提が違うと、そのまま使えません。数値と一緒に、次のような前提の記録をしておくことが大切です。
変換元と変換先の座標系
X・Y・Z軸の向きと右手系・左手系
回転の順序と表現方法
並進の単位(mm・m)
センサー座標系の原点の位置
同じ回転・並進でも、変換の向きを逆にするとそのまま使用できません。設定ファイルや作業記録では、「カメラから世界座標へ」のように変換方向まで明記します。
3Dスキャナ・LiDARの距離と角度のキャリブレーション
3DレーザースキャナやLiDARは、距離の観測値とレーザーの照射方向から3次元座標を計算します。そのため、距離だけでなく、水平・鉛直方向の角度や装置内部の軸の関係も点群形状に影響します。
確認する代表的な項目には、次のものがあります。
既知距離に対する距離のオフセットや倍率
測定距離によって変化する偏差
水平角・鉛直角のずれ
回転軸や光軸の位置関係に由来するずれ
入射角、反射強度、対象物の材質による計測値の変化
キャリブレーションでは、基準距離、寸法が分かっている対象物、平面度が確認された基準面などを計測し、点群から得た距離や寸法を基準値と比較します。装置によっては、利用者が補正値を変更するのではなく、メーカーや校正事業者が調整・校正を行います。取扱説明書で、日常点検として実施できる確認事項と、専門設備が必要な作業事項を区別することが大切です。
なお、点群の位置合わせは、点群同士の「相対的な」ずれを小さくする処理です。複数の点群がきれいに重なっていても、距離や角度そのものの正しさが確認できたとは限りません。そのため、計測精度は既知寸法の対象物と比べて別に確認します。
LiDARとカメラの外部キャリブレーション
LiDARとカメラの外部キャリブレーションでは、LiDAR座標系の3次元点をカメラ座標系へ移す回転と並進を推定します。この変換とカメラの内部パラメータを使うと、LiDARの点を画像上へ投影し、点群へ色情報や画像認識の結果を対応付けられます。
ターゲット(形や寸法が分かっている板など)を使う場合の手順の例は次の通りです。全体の流れと検証の進め方は「キャリブレーションの基本的な実施方法」で説明します。
カメラ単体を調整する:先にカメラの内部キャリブレーションを行います。
ターゲットを置く:カメラとLiDARの見える位置に配置します。
位置を変えて計測する:ターゲットの位置や向きを変えながら複数回計測します。
特徴を取り出す:画像とLiDAR点群それぞれから、ターゲットの面や角を抽出します。
位置関係を計算する:特徴が一致するように、センサー間の回転と並進を求めます。
結果を検証する:点群を画像に重ねて、ずれがないかを確認します。
MathWorksのLiDARとカメラ校正解説も、両センサーで校正ボードを観測し、回転と並進からなる剛体変換を推定する流れを示しています。
キャリブレーションの基本的な実施方法
対象によって具体的な手順は異なりますが、3D計測のキャリブレーションは次の流れで進みます。

目的と要求精度を決める: 寸法検査、位置認識、3Dモデル作成などの用途と許容できる誤差を決めます。
対象パラメータを特定する: 距離、カメラ内部、センサー間の外部パラメータなど、何を求めるかを明確にします。
基準と計測条件を準備する: 寸法既知のターゲットを選び、距離、位置と向き、照明、温度、センサー設定を決めます。
条件に偏りのないデータを取得する: 計測範囲内の距離・角度・画面位置をカバーするように観測します。
パラメータを推定する: 対応点や基準値との誤差が小さくなる値を計算します。
未使用データで検証する: 推定に使用していないターゲット位置や対象物で精度を確認します。
結果と条件を記録する: パラメータ、座標系、単位、機器設定、日付、使用した基準を保存します。
キャリブレーション用のデータに対する誤差だけが小さくても、実際の計測条件で精度が出るとは限りません。推定用と検証用のデータを分け、用途に近い距離や位置・向きで確かめることが重要です。
結果の確認方法
キャリブレーションの良否は、装置と用途に合った指標で判断します。代表的な確認方法は次の通りです。
確認対象 | 指標・確認方法 | 注意点 |
|---|---|---|
カメラ内部 | 再投影誤差 | 平均値だけでなく画像の端や画像ごとの偏りも見る |
ステレオカメラ | エピポーラ誤差(左右の画像で対応する点の位置関係のずれ)、既知距離の復元誤差 | 実際に使う奥行き範囲で確認する |
3Dスキャナ | 基準距離との差、既知寸法との差、基準面からの偏差 | 距離、方向、面の向きを変えて確認する |
LiDAR・カメラ | 点群を画像へ投影したときの位置ずれ | 画像全体と複数距離で輪郭を確認する |
複数センサー | 同じ対象を観測した点群間の距離 | 既知寸法との一致も確認する |
判定は、再投影誤差のような1つの数値ではなく、用途で許される誤差と照らし合わせて行います。平均誤差が小さい場合でも、遠距離、画像の四隅、斜めの面といった条件では大きくずれることがあります。見た目の重なりに頼らず、こうした厳しい条件でも確認します。
再キャリブレーションが必要のタイミング
キャリブレーション結果は、センサーの設定や取り付け状態が変わると使えなくなる可能性があります。期間を決めて機械的に行うのではなく、装置の変化と点検結果を基準に再実施を判断します。
主なきっかけは次の通りです。
カメラのピント、ズーム、解像度を変更した
カメラ、LiDAR、3Dスキャナを取り外して再設置した
センサーの固定部や治具を交換した
装置へ衝撃や大きな振動が加わった
温度条件がキャリブレーション時から大きく変わった
点群と画像の投影ずれや、基準寸法との差が増えた
メーカーが指定する点検・校正時期になった
日常点検では、毎回フルキャリブレーションを行う代わりに、既知寸法のターゲットや固定した基準点を計測し、結果の変化を監視する方法があります。許容範囲を外れたときに、取り付け状態の確認や再キャリブレーションへ進みます。
まとめ
3D計測におけるキャリブレーションとは、センサーの観測値から正しい3次元座標を得るために、装置の特性や座標系同士の関係を求める作業です。
対象には、カメラの焦点距離やレンズ歪みを求める内部キャリブレーション、センサーの位置と向きを求める外部キャリブレーション、3DスキャナやLiDARの距離・角度のキャリブレーションがあります。それぞれで基準、求めるパラメータ、確認方法が異なるため、「何のずれを扱っているか」を明確にする必要があります。
結果は、推定に使っていないデータと実際の使用条件で検証し、計測範囲の端や遠距離など厳しい条件も確認することで、安定した3D計測につながります。
3D.Core のサービス紹介資料、をダウンロードできます。→ 資料ダウンロード
bestat 編集部について
bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。 https://bestat-data.com/3dcore
参考文献
OpenCV, Camera Calibration and 3D Reconstruction「Camera Calibration」
MathWorks, MATLAB「What Is Lidar-Camera Calibration?」

