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3Dレーザースキャナの基本原理とは|距離と角度から点群になる仕組み

3Dレーザースキャナは、対象にレーザーを当てて、表面の形を多数の点として記録する計測機器です。ただし、レーザーが一度反射しただけで、立体全体が分かるわけではありません。
1点の距離を測り、そのときのレーザーの向きを組み合わせることで、はじめて3次元の位置が決まります。この記事では、距離と角度からXYZ座標を求める原理、ToF・位相差・三角測量の違い、走査したデータが点群になるまで、誤差と死角が生まれる理由を説明します。
執筆: bestat 編集部
3Dレーザースキャナの基本原理
3Dレーザースキャナは、レーザーで対象表面までの距離を測り、そのときの照射方向と組み合わせて、表面上の点を3次元座標として記録します。この測定を多くの方向へ繰り返した結果が点群です。
機器の働きは、大きく次の要素に分けられます。
発光部: レーザーパルスや変調したレーザー光を対象へ送ります
受光部: 対象から戻った光を検出します
測距部: 往復時間、位相差、受光位置などから距離を求めます
走査部: 回転する本体やミラーでレーザーの向きを変えます
角度検出部: 照射時の水平角と上下角を記録します
演算部: 距離と角度をXYZ座標へ変換し、点として保存します
東京都の「職員による点群データ取得・活用ガイド」も、放射状に照射したレーザーが物体から戻るまでの時間で距離を測り、計算した各位置へ点を置く流れを示しています。
この説明でいう「3Dレーザースキャナ」は、三脚に据えて空間を測る地上型だけを指しません。部品へレーザー線を当てて近距離から形状を測る装置も含まれます。対象の大きさや装置の構成によって距離の測り方は変わりますが、対象表面の位置を非接触で多数取得する点は共通します。
距離と角度からXYZ座標を求める仕組み
据置型の3Dレーザースキャナが1点について記録する基本情報は、機器から表面までの距離、水平角、上下角です。この3つが分かれば、スキャナを原点とする点のXYZ座標を計算できます。

距離だけでは、点がスキャナを中心とする球面のどこにあるか決まりません。そこへ左右の向きを示す水平角と、高低の向きを示す上下角を加えると、レーザーが当たった位置を1点へ絞れます。
この観測値は、いったん球面座標として得られます。演算部は三角関数を使い、前後、左右、高さを表す直交座標のX、Y、Zへ変換します。座標軸の向きや角度の定義は機器やソフトによって異なりますが、「距離と2方向の角度からXYZを求める」という関係は同じです。
走査部が少しずつ向きを変え、同じ計算を繰り返すと、壁、床、配管、部品などの表面に点が並びます。FAROの技術解説では、回転ミラーとスキャナ本体の回転で周囲へ光を振り、距離と水平・垂直方向の観測から3Dデータを得る構成が説明されています。
レーザーで距離を測る主な方式
3Dレーザースキャナの測距方式には、ToF、位相差、三角測量があります。どの方式も反射光を利用しますが、受光後に何を測って距離へ換算するかが違います。
方式 | 観測するもの | 距離を求める考え方 | 主に見られる構成 |
|---|---|---|---|
ToF | パルス光の往復時間 | 光が往復した時間と光速から距離を求める | 空間や地形を測る据置型・移動型 |
位相差 | 送信光と反射光の位相のずれ | 周期的に変調した光のずれを距離へ換算する | 屋内外の据置型スキャナ |
三角測量 | 反射像の角度・受光位置 | 光源とカメラの間隔が作る三角形から距離を求める | 部品や表面を測る近距離型 |
ToF方式
ToF(Time of Flight)方式は、短いレーザーパルスを送り、反射光が戻るまでの時間を直接測ります。距離は「光速×往復時間÷2」という関係で求めます。2で割るのは、計測した時間に対象までの行きと戻りが含まれるためです。
1回の測距で一方向の距離が得られます。走査機構で照射方向を変えながら繰り返すことで、広い空間へ点を配置します。
位相差方式
位相差方式は、強さを周期的に変化させたレーザー光を送り、送信した波と戻った波がどれだけずれたかを測ります。その位相のずれを光の伝搬時間に対応させ、距離へ換算します。
位相は周期ごとに同じ状態へ戻るため、長い距離ではどの周期の反射かを区別する必要があります。KEYENCEの位相差検出方式の解説では、複数の基本周波数で得たデータをつなぎ、距離データを作る構成が紹介されています。ToFと位相差を別方式として並べる資料もあれば、位相差を間接的なToFとして分類する資料もあります。仕様書では名称だけでなく、パルスの時間を直接測るのか、変調光の位相を測るのかを確認します。
三角測量方式
三角測量方式では、レーザー光源と受光カメラを離して配置します。対象までの距離が変わると、表面で反射した光が受光素子へ入る角度と位置も変わります。光源とカメラの間隔は既知なので、できた三角形から表面までの距離を求められます。
KEYENCEのレーザー変位計の解説は、対象距離によって反射光が受光素子へ当たる位置が変わる原理を示しています。ZEISSの3Dスキャナ解説では、部品表面へレーザー線を投影し、カメラで線の変化を記録してXYZ座標を得る構成が紹介されています。
方式名だけで精度や用途は決まりません。同じ方式でも、測る距離、視野、光学系、走査間隔、対象表面、校正によって結果が変わるため、対象範囲に近い条件で仕様を読みます。
走査した点が点群になるまで
スキャナが向きを変えながら得たXYZ座標を集めると、1地点を原点とする点群ができます。複数地点から測った場合は、各点群を同じ座標系へ移す位置合わせが必要です。
処理の流れは次の通りです。
機器を設置し、計測範囲と走査間隔を設定します。
各方向で距離と角度を測り、XYZ座標へ変換します。
1回の計測を、その据え位置を基準にした点群として保存します。
別の位置へ据え直し、隠れていた面を別方向から測ります。
ターゲット、共通する形、既知の基準点などを使い、各点群を回転・移動させます。
不要な点を除き、必要に応じて測量座標や設計座標へ合わせます。
位置合わせは「レジストレーション」とも呼ばれます。点群同士で重なる場所を手がかりに、片方をどれだけ移動・回転すれば一致するかを求める処理です。既知の基準点を使えば、スキャナ独自の局所座標から、測量や設計で使う座標系へ結び付けられます。
ただし、位置合わせは見えていない形を復元する処理ではありません。遮蔽物の裏や部品の下面を記録するには、その面へレーザーが届く別の据え位置が必要です。
点が持つ反射強度と色の違い
点群の各点はXYZ座標に加え、反射強度やRGBの色を持つ場合があります。反射強度はレーザーの戻り信号、RGBは主にカメラ画像に由来するため、同じ属性ではありません。
反射強度は、受光部へ戻ったレーザー信号の強さを数値化したものです。表面の反射特性を見分ける手がかりになりますが、材質だけで決まる値ではありません。国土地理院の地上レーザスキャナ測量マニュアルは、照射強度、対象までの距離、地物の反射特性によって反射強度が変わると説明しています。
RGBは、併設したカメラで撮影した画像を点へ対応付けて得ることがあります。色付き点群では形と見た目を同時に確認できますが、撮影位置とレーザーの位置の違い、露出、影、動く物体などによって、色がずれる場合があります。
国土地理院の点群データ解説でも、3次元座標に加えて色情報や反射強度を持つ点群が紹介されています。ただし、すべての点群が両方を持つとは限りません。ファイルを受け取るときは、座標系、単位、反射強度、RGB、時刻など、必要な属性が含まれるかを確認します。
誤差と死角はどこで生まれるか
3Dレーザースキャナの結果には、距離の測定誤差、角度の誤差、対象表面での反射、据え位置ごとの位置合わせが重なります。点が多く見えても、必要な面が正しい位置にあるとは限りません。

主な要因は次の通りです。
距離: 同じ角度間隔で走査すると、遠い面ほど点と点の実際の間隔が広がります
角度: わずかな方向のずれでも、距離が長いほど点の位置ずれが大きくなります
入射角: 面へ斜めに当たるほどレーザースポットが広がり、戻り光も弱くなる場合があります
表面: 鏡面では光が別方向へ反射し、透明体では透過や屈折が起こります。黒い面では戻り光が弱くなる場合があります
遮蔽: レーザーは物体を回り込まないため、柱の裏、配管の背面、くぼみの奥には点ができません
環境: 雨、霧、粉じん、振動、温度変化、動く人や車が測定へ影響します
位置合わせ: 各スキャンに小さなずれがあると、統合後に壁や配管が二重に見えることがあります
国土地理院の同マニュアルは、等角度の走査では遠い場所ほど点間隔が広がること、水で透過・屈折・鏡面反射が起こること、黒色系の地物では反射率が低いことを挙げています。
死角を減らす基本は、必要な面を先に決め、光が届く据え位置を組むことです。複数地点から測るときは、隣り合う点群に十分な共通部分を残します。計測後は全体の見栄えだけでなく、基準寸法、基準点、断面、重なり部分を確認すると、欠測と位置ずれを見つけやすくなります。
取得した点群は完成した3Dモデルではない
スキャン直後に得られる代表的な成果は、表面上のXYZ座標を集めた点群です。点群には点が並んでいますが、点同士をつなぐ面や、壁・配管・部品といった意味は最初から付いていません。
用途に応じて、次の後処理を加えます。
点群のノイズや不要物を除く
複数スキャンの位置合わせを確認する
必要な範囲だけを切り出す
点の間へ面を張り、メッシュへ変換する
断面、寸法、輪郭を抽出する
部材や設備を判別し、CADやBIMの形としてモデリングする
点群を閲覧・計測するだけなら、面を作らずに使える場合があります。一方、見た目を滑らかに表示する、干渉を確認する、設計変更へ使うといった目的では、メッシュ化やCAD化が必要になることがあります。
▶ 関連記事: 点群データとは|仕組み・取得方法・3Dモデルとの違いを解説
まとめ
3Dレーザースキャナの基本原理は、レーザーで測った距離に水平角と上下角を組み合わせ、対象表面の位置をXYZ座標へ変換することです。照射方向を連続して変え、多数の点を取得すると点群になります。
距離の測り方にはToF、位相差、三角測量があり、観測する信号と装置構成が異なります。点にはXYZだけでなく反射強度やRGBが付く場合がありますが、反射強度は戻りレーザー、RGBは主にカメラ画像から得る別の情報です。
計測結果は測距方式だけで決まりません。距離、角度、表面、遮蔽、環境、複数据え位置の位置合わせまでを一つの工程として考えます。必要な面へ実際にレーザーを届け、基準点や寸法で結果を確認することが、使える点群を得る土台になります。
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bestat 編集部について
bestat株式会社は、東京大学 松尾研究室発の産業用3Dデータに特化したAIスタートアップです。製造業・インフラ・土木の現場で、画像・動画・点群・360度動画など、現実空間で取得される多様なデータを高精度に3D化し、取得・生成・処理・活用までを一気通貫して支援する「3D.Core」シリーズを開発・提供しています。https://bestat-data.com/3dcore
参考文献
東京都「職員による点群データ取得・活用ガイド」
国土地理院「地上レーザスキャナを用いた公共測量マニュアル(案)」
国土地理院「点群データ」
KEYENCE「レーザ式レベルセンサ」
KEYENCE「Laser Displacement Sensors」
ZEISS「How Does a 3D Scanner Work?」

